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 これに対して9月26日付(25日発行)夕刊毎日は「“父から逃げたかった 金が欲しかった” 男の情熱に身を焼く」が見出しの日大教授長女の告白文を載せた。そこでは「彼が大金を所持しているのが分かり、これはいままで学校のガソリン代をごまかしていただけではなく、何か大きい悪事をやっているとは想像していたが、かえって新聞を見るのが恐ろしくて彼に聞きもしなかった」と「泣きながら女心を訴え……」とされた。そこでは父親に対する感情を漏らしている。

 父は万事規則正しく、しかも旧弊で、私とは性格も合わず窮屈極まるもので、毎日出歩くわけにもいかず、父が一日中家にいる時などは、とてもたまらない気持ちでした。父は月に一定のお小遣いしかくれず、欲しい物をつい買いすぎ、使いすぎたからといって請求しても全然取り合ってもくれませんでした。こうした父と少しでも離れたい気持ち、自分のお金をもう少し持ちたい気持ち、この2つの点から私は就職口を探しました。

日大教授長女の告白(夕刊毎日)

「こうしていつか、父と娘の心は離れ離れとなっていった」

 記事によると、勤務先では、仕事が終わるのを待っていた客もおり、一緒にお茶を飲んだ。運転手とは、(日大本部の)階段や、手紙を1階の宿直室に取りに行く時によく出会っていた。

 7月の終わりごろか、外出で水道橋まで来ると、後を追ってきた運転手に声を掛けられ「初めて会った時から忘れられない」と打ち明けられた。つい「私もよ」と答えてしまい、その日、銀座に出て夜遅くまで楽しく遊んだ。

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 その数日後、上京した女学校時代の友人の家に遊びに行き、19歳の学生と知り合って付き合うようになった。男らしい運転手、さっぱりした学生と付き合うようになり「楽しい楽しい日々が続きました」。

 父親が出張中の9月10日、運転手に迫られて関係を持ち、それからそちらに引かれていったが、学生とも会っていたのは「それが私を十二分に楽しませてくれたから」だったという。

「19日、私はやむにやまれぬ気持ちから家出を決心しました。(イプセンの戯曲「人形の家」の)ヘルマン(ヘルメル)から去るノラの心境だといえばお分かりでしょう」と手記にある。

 彼女はその決意を運転手と学生の2人に打ち明けた。事件のあった22日は勤めを休み、朝、持ち物を全部東京駅の一時預り所に預け、水道橋で学生に会った。2人で歩いていると偶然、トラックに乗った運転手に出会った。

 運転手は「夜7時に有楽町駅前の喫茶店で待っていてくれ。必ずちょっとまとまったお金を持って行くから」と言った。学生と2人で神宮球場で六大学野球を観戦。6時ごろ、別れて有楽町駅前の喫茶店に行った。運転手はもう来ていた。

「いまから考えますと、彼はその時既に犯行を犯していたのです。結局、家出した私は、帰る家もなくフラフラ彼について行ってしまいました。女として私は彼を熱愛してきました。いまでもこの気持ちは変わりません。悪い女かもしれませんが、結局、あまり厳しい父のしつけと理解のない家庭の冷たさから逃れようとしたのが私の転落の原因でした」と彼女は述べている。