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 前回の連載でも触れたように、スー・ルイチーは過去に2度中国版『PRODUCE 101』に参加し、昨年は最終11位で涙をのんだ。しかし今回は、政治発言のデジタルタトゥーが韓国で問題視されデビューを逃した。もはやそれは、中国政府や韓中関係に翻弄された不幸でしかない。

中国政府による韓国コンテンツの締め出しという「壁」

 グローバルグループを標榜するKep1erは、当然のことながら日本や中国における活動も視野に入れている。2019年のK-POP輸出額は、日本と中華圏(台湾と香港を含む)だけで約7割を占める。BTSやBLACKPINKが北米でブレイクしても、依然として東アジアがK-POPにとって主要マーケットであることにかわりはない。

 だが、日本では堅調なものの、中国マーケットではけっして好調とは言えない。2017年以降は伸び率が鈍化しており、2019年には東南アジアとシェアが逆転した。これには理由がある。

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 2016年7月、韓国は米軍のTHAAD(弾道ミサイル迎撃システム)配備を決定した。中国政府は、その報復として韓国のコンテンツや芸能人を締め出す「限韓令」を指示した。それが現在まで5年近くも続いている。

 韓国のコンテンツ企業は、この間もさまざまな手段で中国マーケットを開拓してきた。たとえばそのひとつが、中国版『プデュ』である『創造営』シリーズのような番組フォーマットの輸出だ。直接的な韓国コンテンツでなくとも、K-POPは輸出できることが示された(出演者はK-POP出身の中国人ばかりだ)。

 だが中国当局は、『ガルプラ』放送中の9月2日に国内の芸能の締め付けを発表した。オーディション番組を禁止したり、SNSのK-POPファンアカウントを一時停止したりした。未成年者のいわゆる「推し活」の過剰化を抑制する項目もあるように、若者の風紀を保つことが目的とされている(現代版「整風運動」とも呼ばれている)。