歌舞伎俳優のメディア露出は「必要なこと」
近年、歌舞伎界とメディアの距離も変わりつつある。七之助は、そんな現状をどう感じているのか。「コロナになって、特に歌舞伎俳優のメディア露出が増えていますよね。これは必要なことですよ。昔はテレビなんか出て、と怒られたものですが、時代が本当に変わって、いい意味で敷居が変わってきている。そこで興味関心を持ってもらえて、生の歌舞伎を見にきていただけるのも一つの収穫です。シネマ歌舞伎だって、これを始めたらお客様が生の歌舞伎を見に来なくなるって危惧されていたのが、実際は逆だったんです」
七之助は、その変化を仕掛け、担っていく中心世代だ。「歌舞伎は昔からそういうものだったと思うんです。400年近く続いている伝統芸能ですけれど、当時は現代劇で、ニュースの役割も果たしていた。忠臣蔵もそうです。その時代その時代を生きているのが歌舞伎で、先人たちの型が磨かれて継承される上に現代の技術が乗っかっていくわけだから、今の歌舞伎はお得感がありますよね。とっても面白い時代だと思います」
新型コロナウイルス感染拡大の影響も一旦は収まり、劇場に役者と観客が戻ってきた。現在も、七之助の出演作としてTBS赤坂ACTシアターで「赤坂大歌舞伎」が公演中。12月には歌舞伎座での「十二月大歌舞伎」も予定されている。フジテレビで放映されている『密着!中村屋ファミリー』は国際エミー賞にノミネートされ、結果発表を待つ状態だ。
「今は毎月のように舞台に出してもらっているので、心も落ち着いてきているかなと。コロナの間は全くお仕事がなかったので、兄とバイトか何かしなくちゃいけないと話し合っていたほどで」。そう言うと、七之助は綺麗なアーチ型の眉をキュッと上げて微笑んだ。
「昨年8月に舞台を再開したとき、初日はお客様の拍手で音楽が聴こえないくらいで、『やっていいんだ』って思わせてもらえました。お客様にも心からありがとうと感謝して、信じてやっていきます」
撮影=杉山秀樹/文藝春秋
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