来年1月からは、子ども向けの化石探検ツアーも
ガイド担当スタッフの方々は古生物学が専門というわけではない。
通常業務のかたわら、訪れたお客様に三越の歴史を伝える一環として独自に研鑽を重ねているという。
日本橋三越本店の本館は大正12年(1923年)に発生した関東大震災からの復興を機に6年の歳月を費やし増築改修されたもので、国内外の石材をふんだんに使用し、 昭和10年(1935年)に現在に近い様相となった。平成28年(2016年)には日本橋高島屋と並び、百貨店建築として重要文化財に指定されている。
こうした活動が直接業績向上に繋がるかどうかは断言できないが、「日本橋三越本店」という場所への愛着を醸成してもらう足がかりとしての意義は大きい。
現に私はすっかり三越愛を発掘されてしまった。
こうした建築の中に眠る化石は全国各地に存在する。
先日日本橋三越本店アンモナイトのつぶやきが拡散された際にも「うちの地元の施設にもある」「私も探しに行ったことがある」「最寄駅の構内にあったが今はもうない」といった つぶやきが多数寄せられた。
博物館へ化石を見に行くことは手軽だし確実である。様々な年代の貴重な化石が詳細 な解説とともにディスプレイされているはずだ。
しかし、街で偶然出会う化石のなんと鮮烈なことだろうか。都市と化石。百貨店と化石。解剖台の上でのミシンとこうもり傘の不意の出会いのように、物と場所とのミスマッチに人は惹かれるのだと思う。
アンモナイトたちが現代に姿を残している偶然と、貴重な石材を惜しみなく披露してくれる諸施設の厚情に感謝しつつ、今後も都市の化石を発掘していきたいと思う。
参考資料 : 「東京『街角』地質学」西本昌司著(イースト・プレス)