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 2021年の春に銀座でばったりと出くわし、互いの近況を短い時間ではあったが語る時間があった。その日、私は銀座で取材があったのだが、思いのほか早く終わってしまい、時間を持て余していた。あるデパートで障害者アートをデザインソースに使ったマスクやネクタイを展示、販売するイベントがあることを知っていたので、思い立って会場を訪ねることにした。マスクを物色しながら、ふと横を見ると知った顔があった。偶然にしては出来過ぎているので、他人の空似かもしれないと思ったが、どうにも本人にしか見えない。向こうも気がつき、同時に「あっ」と声を出した。

「想真じゃん。久しぶり、いや、すごい偶然だ……。元気にしてた? 最近何やってんの?」

「今ね、ちづるさんの映画の撮影もやっているんだよ。ちゃんと踊るシーンだってあるんだよ」

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「すっごいじゃん。頑張ってるな」

「健常者」のアーティストの反応

 オリンピック、パラリンピックの開催に反対する世論が多数派のなかで出演に喜びと意欲を見せるパフォーマーがいたことは確かに朗報だったが、東が頭を悩ませていたのは「健常者」のアーティストだった。

 開催そのものに反対だから協力したくないと言うのならば、まだいい。東自身が掛け合い、「東京2020の公式プログラムで多様性と調和がテーマで、冠パートナーはJALで……」とオファーを出し説明をすると、最初は多くの人が乗り気になる。ところが、共演者の名前や詳細を説明すると「一旦、預からせてください」となり、本人は乗り気でも事務所が断ったり、現場のマネージャーは「受けるべきだ」と粘っても最後は「総合的な判断」を理由に断られたり、あるいは「企画は素晴らしいです。でも、この作品で表現する『多様性』に自分が入ることは、ちょっと考えていません」という返事が来たりもした。

写真はイメージです ©iStock.com

「さすがに落ち込みましたけど、これが日本の芸能界の現実ですね。別に断った人たちが悪いわけではないんです。普段から、障害のあるアーティストと共演することを想定していないからオファーが来ても戸惑うだろうし、どう見られるのかと考えてしまう。これって仕方ないことなんですよ、経験がないから。だから私たちがずっと活動しているんです」