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ポスターさえ貼られてない駅

 夏の日差しが照りつける晴天の日。

 乗客もまばらな電車に揺られながら、Fさんは考える。せっかくのぶらり旅だ、パンフレットに載っているような大きな町に行っても面白くない。たとえつまらなかったとしても、知らない町に降りてみるのが思い出づくりというものだ。

 そんなことを考えていると、車内アナウンスから耳慣れない駅名が聞こえてくる。ここだ! そう思うやFさんは人気のない小さな駅に降り立った。

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 時間はお昼の2時を回った頃、Fさんは走り去る列車の最後尾を眺めていた。

「勢いで降りたはいいけど、実際これからどうしよっかな……」

 早くも一抹の不安がちらつき始めたが、駅舎に地元のパンフレットくらいあるだろうと、アブラゼミのジジジジッ…ジジジジッ…という鳴き声を聞きながらホームを歩き出した。

 だが、駅舎に着くやその目論見は頓挫した。駅舎にはパンフレットはおろかポスターさえなかったのだ。しょうがない、ここは自分の勘に従おう。Fさんはリュックを背負い直して駅を出た。

人気のない小さな港

 空気も比較的乾いている心地の良い夏の午後なのだが、いかんせんこの町、人がいない。車はおろか沿道を歩く地元民さえいないのだ。

「田舎って、意外とこんなもんなのかなぁー」

 人気の無さをいいことに独り言を呟きながら歩を進めるも、生垣と民家しかないような町である。だが、しばらく進むうちにアブラゼミの鳴き声に混じって、ザザーン…という波音が聞こえ始め、青い海が見えてきた。

「あー、港町か」

 住宅が密集した場所の先には、小さな港があったのだ。だが、Fさんの目を引いたのは誰もいない漁港ではなく、その少し先の高台にあった白い建物だった。