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なんでそんなこと言うの?

 彼らはきらびやかに包装されたプレゼントの箱を次々と女子高生に手渡している。渡された彼女も――

「ありがと~! うわすごーい! 本当にありがと~!」と、心から喜んでいる表情を見せていた。

 これ、びっくり系の動画とかそういう類だろうか、Nさんはそんな予感がして顔を画面から少し離した。そんな動きに連動するように、画面内のカメラが再び引き始める。

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 ジーーーーーー

「え、これ廃墟じゃない?」

 ケーキの置かれた小さなテーブルと椅子に座る女子高生、そして周囲の人々。その背後にあるのは薄暗く、壁紙がところどころ破れ、足元にはブロックが散乱している、どこかの廃ビルのようだ。

 パチパチパチパチパチパチパチパチ!!

 パチパチパチパチパチパチパチパチ!!

 パチパチパチパチパチパチパチパチ!!

 プレゼントを渡し終えた人々が次々と拍手を女子高生に送り始めていた。

 この異常な状況の映像に、徐々にNさんのなかに得体の知れない不穏な気持ちが満ち始める。

「よかったねぇ~」

「おめでとうねぇ~」

「キョウコ、17歳おめで――」

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!! なんで、そんなこと言うのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 突然、女子高生が金切り声をあげて絶叫し始めた。

 そして、固く握りしめた拳をケーキに思いっきり振り下ろした。

 ダァンッ!!

 ダァンッ!!

 ダァンッ!!

 ダァンッ!!

 ダァンッ!!

 ダァンッ!!

 何度も、何度も、ケーキが跡形もなくなり、下のテーブルを殴りつける勢いで、女子高生は拳を振り下ろした。

 そして、急に立ち上がると、今度は周囲に置かれたプレゼントの箱を、思いっきり殴りつけて破壊し始めた。

「アアアアアアアアア、ア、アアアアア……アアアアアアアアア!!!!」

 ズーーー…ズッ、ズズーーーー…ズズーーー……

 再び画面にノイズが走り始める。女子高生の拳には血がにじんでいた。

 だが、周囲の人々は全く動揺することなく無言で彼女の奇行を眺めている。

 動画を凝視していたNさんと彼女は、「なに、これ……」「いや、わかんない…けど……」と顔を見合わせる。

 しばらくすると、女子高生は突然倒れた椅子に落ち着いた様子で座り直し、周囲の老人が渡したタオルで、拳や飛び散ったケーキの破片を拭き取り始めた。