北九州に住む書店員である・かぁなっき氏。彼は大学時代の後輩でもある映画ライターの加藤よしき氏と、猟奇ユニット“FEAR飯”を結成。その語り手担当として2016年からライブ配信サービスTwitCastingで、怪談チャンネル「禍話」を続けてきた。そこで語られる実話怪談の数々は、ホラーファンを掴んで離さない強烈な禍々しさに満ちている。
今回は「禍話」の中から、人気ストーリー「ぼーだーの動画」をお届けする。とある家庭教師が垣間見た、猟奇的なビデオにまつわる出来事とは――。(全2回の2回目。前編を読む)
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“ぼーだー”を名乗るしつこい人物
家庭教師の生徒である女子中学生・Aさんの兄・B君がおかしくなってしまったのは、自分がグロ動画について干渉しすぎたせいかもしれないと感じたNさん。もう一度だけB君と話したほうがいい、そう思ったNさんは意を決してB君の部屋をノックして声をかけた。
するとB君は意外にもNさんの声を聞くと、駆けつけるような足取りで扉を開けてくれた。
髪はボサボサで、顎にも薄っすらとヒゲが生えてきている。Nさんはベッドに腰掛けながらB君の様子を観察し、その心の内に思いを巡らせる。
「あの、妹さんから、例の“ぼーだー”さん?から動画が送られてきたって聞いたんだけど……」
まずは彼の話に乗って話していこう。Nさんはそれくらいの心持ちでこの話題を振ったそうだが、B君は思いがけずこの話題に食いついてきた。
「え? はい、そうなんですよ、そう、あの動画見てから、なんかもう全部ダメになっちゃって、自分でもどうしてこんな状況になっているのかわからず……」
「あー、そうなんだ」
「しかも、あの人…俺がもういいですって言ってもすげーしつこく送って来るんですよ。あと、『ほかの人にも見せろ』ってめっちゃ言ってくるのが気持ち悪くて……」
「え?」
B君の口調やその落ち込みようからは、それらの言葉に嘘はないように思えた。
「でも、あんなもの家族には見せられないですよ、俺もいろいろすごいの観ましたけど、なんか、そういうのとは違うというか……」