終わらないハッピーバースデー
そして、人々がおもむろに散乱したプレゼントやケーキの残骸を片付け始める。あらかた片付け終わった後、画面に映ったものにNさんと彼女はギョッとした。
また、ケーキが運ばれてきたのだ。
「ハッピ…デートゥー…ウー!」
ズーーー…ズッ、ズズーーーー…ズズーーー……
「ハッピバース…ートゥー…ユー!」
ズーーー…ズッ、ズズーーーー…ズズーーー……
「ハッピ…デーディア、ョウコちゃーん」
ズーーー…ズッ、ズズーーーー…ズズーーー……
「ハッピバース…バースデートゥー…ユー! おめでと~!」
ズーーー…ズッ、ズズーーーー…ズズーーー……
「ありがとー! みんなありがとうー!」
異様な事態が起きている。どう考えても普通ではない。一瞬、何かの映画のワンシーンかと思ったが、女子高生の拳からタラタラと流れている血は、演出とは思えないリアルさだった。
「ねえ、これ、なんかマズイやつじゃない……」、Nさんの彼女が袖を掴む。
ガサガサササ……
周囲の人々が無言でプレゼントを準備し始める。
一体何が起きているのか、全く理解できない。この不可解な行事を写したビデオはなんなのか。これを見てなぜB君は心を病んでしまったのか。そもそも“ぼーだー”がこれをB君に送りつけたのにはなんの意味があるのか。
ガガッ……
「あの、これもう1回あるんですよね?」
突然、女子高生の周囲にいた一人のサラリーマンのような男が、カメラに向かって振り返り小声でそう問いかけた。
「えぇ、もう1回あって“おわり”になります」
カメラマンらしき女性が答える。
「ああ、わかりました」
パチパチパチパチパチパチパチパチ!!
パチパチパチパチパチパチパチパチ!!
パチパチパチパチパチパチパチパチ!!
ズーーー…ズッ、ズズーーーー…ズズーーー……
これが段取り通りとでも言うかのような女性カメラマンの様子に、Nさんは一気に血の気が引き始めた。
この異様な状況が繰り返され、最後に起きる何かでB君はおかしくなった。
そんなもの、もう見たくなかった。
カチャ
Nさんは動画を止め、ファイルを削除した。