1ページ目から読む
5/5ページ目

「最後さ、何が起こるの?」

 翌日、B君から電話があった。あの動画を見たのかを、申し訳なさそうに問うものだった。

「いや、やめたよ、2回目のアレが起きる前に」

「はい、ああ、そうですか……」

ADVERTISEMENT

「なんか、その、怖くなっちゃって……」

「そうですか、いや、途中まで見ていただけただけでもありがたいです」

「え?」

「最後までアレ見たら、流石によくないと思うんで」

©️iStock.com

「最後さ、何が起こるの?」

「………肉食べられなくなりますよ」

「どういうこ――」

「多分10人くらい死んでますよ、あれ」

「え?」

 Nさんは勝手にあの後女子高生が殺されるものとばかり思っていた。

「でも、そんな大事件この世界で起きたら、普通絶対ニュースになりますよね?」

「え、いや……」

「だから“ぼーだーの動画”なんですよ」

「ん、どういうこと?」

「………俺、“ぼーだー”さんにNさんが見てくれるってこと伝えたら、『それでいい』って言ってくれて、もうメールこなくなったんです」

 様子のおかしいB君の話を聞いているうちに、Nさんは気分が悪くなってきたそうだ。

「俺、あれ絶対CGとかそういうのじゃないと思うんですよね。落ちてたブロックも本物だと思うんですよ。あれで――」

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!! なんで、そんなこと言うのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 突然、電話の向こうから、あの動画で見たのとそっくりな絶叫が聞こえた。

 声の主は、Aさんのようだった。

「おい、おまえ……なんで――」

 ガサガサガサ……

 プッ、プーーーッ

 プーーーッ

 プーーーッ

 プーーーッ

 プーーーッ

 電話はそこで切れたそうだ。

◆◆◆

 数日後に、NさんがAさんの家に家庭教師として訪れると、一家の様子はこの一件が起きる前のように元通りになっていた。

 勉強熱心で飲み込みも早いAさん、快活な笑顔のB君、人当たりの良いご両親。

 Nさんは、動画の件は一言も口にできなかった。させてもらえない空気があの一家には漂っていた。

 彼はその後、家庭教師の期間を終え、それ以来Aさんの一家とは連絡を取っていないそうだ。

(文=TND幽介〈A4studio〉)