「最後さ、何が起こるの?」
翌日、B君から電話があった。あの動画を見たのかを、申し訳なさそうに問うものだった。
「いや、やめたよ、2回目のアレが起きる前に」
「はい、ああ、そうですか……」
「なんか、その、怖くなっちゃって……」
「そうですか、いや、途中まで見ていただけただけでもありがたいです」
「え?」
「最後までアレ見たら、流石によくないと思うんで」
「最後さ、何が起こるの?」
「………肉食べられなくなりますよ」
「どういうこ――」
「多分10人くらい死んでますよ、あれ」
「え?」
Nさんは勝手にあの後女子高生が殺されるものとばかり思っていた。
「でも、そんな大事件この世界で起きたら、普通絶対ニュースになりますよね?」
「え、いや……」
「だから“ぼーだーの動画”なんですよ」
「ん、どういうこと?」
「………俺、“ぼーだー”さんにNさんが見てくれるってこと伝えたら、『それでいい』って言ってくれて、もうメールこなくなったんです」
様子のおかしいB君の話を聞いているうちに、Nさんは気分が悪くなってきたそうだ。
「俺、あれ絶対CGとかそういうのじゃないと思うんですよね。落ちてたブロックも本物だと思うんですよ。あれで――」
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!! なんで、そんなこと言うのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
突然、電話の向こうから、あの動画で見たのとそっくりな絶叫が聞こえた。
声の主は、Aさんのようだった。
「おい、おまえ……なんで――」
ガサガサガサ……
プッ、プーーーッ
プーーーッ
プーーーッ
プーーーッ
プーーーッ
電話はそこで切れたそうだ。
◆◆◆
数日後に、NさんがAさんの家に家庭教師として訪れると、一家の様子はこの一件が起きる前のように元通りになっていた。
勉強熱心で飲み込みも早いAさん、快活な笑顔のB君、人当たりの良いご両親。
Nさんは、動画の件は一言も口にできなかった。させてもらえない空気があの一家には漂っていた。
彼はその後、家庭教師の期間を終え、それ以来Aさんの一家とは連絡を取っていないそうだ。
(文=TND幽介〈A4studio〉)