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『JJ』は“「保守的」な女性の読み物”だった!? 長きにわたって男性が編集長に任命され続けた“納得の理由”

『JJとその時代 女のコは雑誌に何を夢見たのか』より #1

2022/01/09
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JJ読者の「選び方」

 JJは読者を明確に規定した。私立大学や附属の女子校などに通える余裕のある家庭に生まれ、高級ブランド品を手に入れることができ、なおかつ、大学や仕事の選び方に何かしらの筋が通っていること。それがすなわち彼女たちのファッションと生き方、双方の選び方に通ずるJJ哲学を示すことになり、対外的な印象の形成にも寄与する。小倉千加子が「女性偏差値重視派」と呼んだ印象の形成には、単なる女子力や美しさだけではなく、何をもって生きる道を選ぶかという、女性としての矜持が関係している。

 ここでの大学名の選別はある意味妄想的であって、少なくともイメージでしかない。しかしそのイメージが何より重要だとJJは示した。偏差値や立地、好きな学問を学べるか、どんな先生がいるか、どんな就職に有利か、どんな部活やサークルがあるか、など個人が大学を選ぶ際には多面的な要素がある。ただし、JJが想定した読者の女のコたちが何かを選ぶときの基準は、女性としてのイメージが良くなること、結果的には結婚によってより一層の階層の上昇に繋がることだった。その一貫した姿勢の上で、何を選ぶべきなのかを具体的に示すのが雑誌の役割であるという考え方のもと、JJはブランドや着こなし、ヘアスタイル、登場する大学名や職業に至るまでを誌面で示した。それはある意味、男性の視点や思想を内在化させ、その視点で物事を決める習慣をつけることでもある。その漠然とした「男性の視点」は、男性編集長のもと、強烈な印象をもって、雑誌が提供した。

 社会人の肩書もよく見られるが、目立つのは「メーカー勤務」「国際線CA」「弁護士秘書」「総合商社勤務」など。それぞれ立派な仕事に違いないが、彼女たちは、男が会社や仕事を選ぶように、それらの仕事に就いている気迫はない。むしろ、男ではない彼女たちが、どのような基準で就く仕事を選ぶべきかを示しているのがJJの誌面だった。

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 1995年10月号では、「お嬢さまOLの『ワンピース日和』」といった特集が組まれ、「デートの時は女らしく」「会社の行事のある日に選びたい清楚なローウエストワンピース」などの提案がなされる。

「「JJ」 1995年10月号」

 また、1999年5月号にある「オフィスのmiumiuちゃん ヴェルニ嬢 エルメスさん」では、「ちやほやされたい1、2年目」「そろそろ“かっこいい”と言われたい3、4年目」「“かっこいいけど肩ひじ張らない”が理想の5、6年目」のOLを、それぞれのイメージのブランドのバッグに合わせて紹介する。彼女たちにとって、仕事を続けることは、出世や自己実現以上に、より高額なバッグを買い、それぞれの段階にあったより高級な自己演出をすることだというのがよくわかる。

「「JJ」 1995年10月号」