昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2022/01/03

選手とファンを巻き込んだ「言霊」の威力

 高津監督が、「絶対大丈夫」と口にしたのは、ペナントレースがいよいよ佳境を迎えようとしていた9月7日の試合前ミーティングのことだった。その直前の一週間は1勝4敗1分という成績で終えていた。オリンピックのため、本拠地である神宮球場が使えない。勝負のときを迎えていた頃、高津監督は選手たちを招集したのだった。

 ここで高津監督は、自身が仕えた野村克也の言葉を引用しつつ、「ここまで来たら勝負は時の運だ」と選手たちに訴えかける。そして、その後にこう続けるのだ。

「チーム一丸となれば絶対大丈夫。どんなことがあっても僕らは絶対に崩れない。絶対大丈夫、絶対大丈夫」

 この模様は、球団の公式YouTubeでも公開され、ファンたちもその言葉に胸を熱くし、この日の試合は優勝争いをしている阪神相手に12対0と快勝する。その後、9月17日からの10連戦は7勝3分と一度も負けなかった。さらに、指揮官自ら「勝負のとき」と位置づけていた10月5日から10日までの3位巨人、2位阪神との6連戦においても5勝1敗と、絶対に負けられない連戦において、圧倒的な勝負強さを発揮したのである。まさにチームが一丸となって「絶対に崩れない」、「絶対に大丈夫」を体現したのだ。

山本由伸投手と握手を交わそうとする高津臣吾監督 ©文藝春秋

 大事な試合に勝利した後、選手たちは競うように試合後のヒーローインタビューで「絶対大丈夫」と口にした。それはまるで、くじけそうになったり、弱気になったりする自分たちを鼓舞するかのようでもあり、「オレたちは絶対大丈夫」と言い聞かせているようでもあった。

 高津監督の発したこの言葉は、選手たちを奮起させるだけではなく、ファンの心にも火をつけた。2021年のチームスローガンに「真価 進化 心火」とあるように、2年連続最下位に沈み、どうしてもネガティブに考えがちになるファンを勇気づけることにも成功したのだ。

 球団の対応も早かった。すぐに高津監督の直筆による「絶対大丈夫」グッズが発売され、ファンは「絶対大丈夫Tシャツ」を着用し、「絶対大丈夫タオル」を掲げ、「絶対大丈夫ステッカー」を身に着けた。優勝争いのプレッシャーの中、あるいは白熱するクライマックスシリーズ、そして一瞬たりとも気の抜けないオリックス・バファローズとの日本シリーズでも、球場スタンドには「絶対大丈夫」グッズがいたるところで存在感を発揮していた。

 指揮官の発した言葉が選手、そしてファンたちを巻き込んで、グングン力を帯びていく様子は圧巻だった。まさに、「言霊」という言葉を実感する瞬間だった。高津監督の言葉は、みんなを一つにする圧倒的な力を持ち、見事な結果をもたらしたのだ。