2021(令和3)年、プロ野球ペナントレースを制した東京ヤクルトスワローズ・高津臣吾監督の名フレーズ「絶対大丈夫」に触れる前に、シーズン序盤からセ・リーグの中心となった阪神タイガース・矢野燿大監督の言葉から紹介したい。
ペナントレース終了後、善戦むなしく2位に終わった矢野監督が、大阪市内の阪神電鉄本社にて藤原崇起オーナー兼球団社長にシーズン終了報告を行った。このとき、自身の采配について振り返った際に発したものだ。矢野監督はこんな言葉を口にしている。
阪神・矢野燿大監督の反省の弁
「僕自身、何か采配であったりかける言葉であったり、何かできることがあったんじゃないかなってことはすごく思います」
矢野監督の口から飛び出した「かける言葉」というフレーズに注目してほしい。チームを鼓舞するために、監督として選手たちに何か言葉をかける必要があったのではないのか? 彼自身の反省がにじみ出ているような一節だ。このとき、矢野監督の頭にあったものは何なのか? 勝手な想像でしかないけれど、おそらくそこには、敵将であるヤクルト・高津臣吾監督の「絶対大丈夫」という言葉が脳裏をよぎっていたのではないだろうか?
勝負所でどんどんチームの勢いを増していったヤクルトと、大事なところで失速していった阪神。1位ヤクルトと、2位阪神との最終的なゲーム差は「0」だった。紙一重の差で一方は栄光をつかみ、一方は敗者となったのだ。結果論かもしれない。しかし、勝負の世界は結果がすべてである。
1位と2位、天国と地獄の差を分けたもの、それは高津臣吾監督が選手に、そしてファンに訴えかけた言葉――絶対大丈夫――だと考えるのは大げさすぎるだろうか?