宇垣 シロさんと佳代子さん家族との交流がすごく好きです。この雑さと距離感が心地いいんだろうなと。
よしなが 実はあの2人の関係が一番ファンタジックですよね。突然スーパーで「スイカを分けましょう」と声をかけられて友達になることはまずない(笑)。
宇垣 出てくる料理を実際にいっぱい作っていて。昨日、牛肉が安かったので佳代子さんのローストビーフを作って、今煮汁につけてあります! 副菜も含めて献立通りに作ることも多いです。手順が描いてあるので、1回読んで頭にいれてから作るとすごく手際がいい人みたいになって嬉しいんですよね。
「食べ物を描く時だけ安心できるんです」
よしなが ありがとうございます。1人暮らしで自炊されているのはすごいですね。食材を使い切るのが大変じゃないですか?
宇垣 はい。使い切るために同じものが続いたりしますね。よしながさんの漫画に出てくる食べ物はとにかく全部好きです。『大奥』を読んで、うなぎも食べに行きました。
よしなが 漫画を描いていて自信が持てない時も、食べ物を描く時だけちょっと安心できるんです。食べるのが好きな方は引っかかってくださるかもしれない、と。
宇垣 読んでいて、本当によしながさんが食べることがお好きなのが伝わってきます。『愛がなくても喰ってゆけます。』(太田出版)の中で「あたしがこんだけ食い物に人生を捧げてきたんだから食い物の方だってあたしに少しは何かを返してくれたっていいと思うの」というセリフがあって、「私もそう思う!」と(笑)。
よしなが 本当に返ってくるんですよ。物事の結果はその人がその事についてどれだけ考えてきたかに比例すると思っています。私は食べたことのないものを夢とか想像で味わったことがありまして……友達が隣で食べてきたものを解説してくれて「ふんふん」と聞いていると、100分の1ぐらい味がしてくるんです。
宇垣 すごい!
『美味しんぼ』に出てきたムカゴの味
よしなが 子供の頃『美味しんぼ』に出てきたムカゴを夢で食べたこともあって。大人になって実際に食べたら、夢で食べたような味でした。
宇垣 私はまだまだその域に達していません。
よしなが いやいや、私のこれは病気なので(笑)。
宇垣 よしながさんと、漫画のお話がこんなにできるなんて……ファン冥利につきます!
よしなが こちらこそ、漫画のお話をしたかったので、嬉しいです! ありがとうございました。
宇垣 すごく幸せな時間でした。ありがとうございました。
写真=深野未季/文藝春秋
よしながふみ 1971年、東京都生まれ。『大奥』で第10回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、第13回手塚治虫文化賞マンガ大賞などを受賞。他の作品に『愛すべき娘たち』『きのう何食べた?』など。
うがきみさと 1991年、兵庫県生まれ。フリーアナウンサーとしてテレビ、ラジオ、CM出演のほか、女優業や執筆活動も行う。小誌連載をまとめたマンガコラム+エッセイ集『今日もマンガを読んでいる』が好評発売中。