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チェーン店に行くために飛行機に乗るように

「本店だから美味しい」と感じたのは、ひょっとすると味以外の“何かの要素”が精神に作用しているのではないか。それは一体何なのか? 他のチェーン店でも同じ現象が起こるのか?

 その答えを確かめるべく、私のチェーン店探訪が始まった。15年前のことである。まずは近場の店への探訪から始まり、徐々に遠方の店にも行くようになった。

 長崎ちゃんぽんの「リンガーハット」の創業地は長崎で、1号店は今も長崎で営業中だと知った私は、長崎空港行きの航空券を買い、ホテルも手配した。

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「チェーン店に行くために飛行機に乗る日が来てしまった……!」

 何時間・何万円もかけてたどり着いた、リンガーハット1号店の長崎宿町店。創業当時の店舗写真や、店名となったイギリス人実業家フレデリック・リンガー氏の肖像が飾られた店内で食べる「長崎ちゃんぽん」は、の1本、キャベツの1枚、スープの1滴までドラマに満ちていた。まさに、チェーン店が旅の目的になった瞬間である。

※写真はイメージです ©iStock.com

 やがて全国チェーン店の本店や1号店の大半を探訪した私は、徐々に全国のローカルチェーン店の本店や1号店の探訪へとシフトしていった。どこにどんなローカルチェーン店があるのだろうか。「知らない店を知る」ために、Googleマップや食べログを駆使して、まだ見ぬチェーン店を旅の目的地にした。

「チェーン店ツーリズム」とは

 旅先で行くローカルチェーン店には、地元の人ばかりの空間が広がっている。働く人や子供連れの家族が、土地の言葉で賑やかに食事を楽しむ。厨房からは食材や出汁の香りが漂い、調理の音が聞こえてくる。

 私はそんな空間がたまらなく好きだ。観光客向けの“よそ行き”の場所に行くよりも、こうした“普段着”の空間で地元に溶けこむことに旅の醍醐味を感じる。