一方で、私たちの体は一定量の糖質を必要とします。
生化学の教科書には、「糖質は自然界で最も豊富に存在する有機分子である」と説明されています。糖質は、ほとんどの生物の食事に含まれるエネルギー源で、生命を維持するための重要な役割を担っています。
私たち人間にとっても糖質は必須で、まったく無縁でいることなどできません。
約250万年前にホモ・ハビリスが誕生してから、人類はずっと狩猟と採集で食べ物を得てきました。実に、10万世代以上が、木の実や山菜、魚、ときどき仕留められる獣の肉を食べて命をつないできたのです。
ということは、狩猟と採集でまかなえる食料に、人類に必要な量の糖質は含まれているということです。
対して、農耕が始まったのは約1万年前。人類の長い歴史から考えれば、米や小麦粉を口にしたのはつい最近の話で、約600世代がそれをしてきたに過ぎません。
農耕によって、安定的な食糧確保が可能になり、世界の人口が増えていったのは事実です。とくに、エネルギー源となる炭水化物は歓迎されたでしょう。
でも、今ほど糖質を多量摂取するように、私たちはプログラミングされていません。現代の私たちの食事は、明らかにDNAに反しているのです。
米や小麦といった炭水化物をたくさん栽培できる農耕技術を手にしたとき、すでに糖質中毒のタネは蒔かれていたと言っていいでしょう。
炭水化物と砂糖が脳に刻み込んだもの
イタリア人がパスタをこよなく愛するように、日本人は白いご飯が大好きです。
私たちの遠い祖先はパスタもご飯も口にしたことはありませんが、「日本人はずっとお米を食べてきた」と考える人がたくさんいます。
多くの日本人にとってお米は絶対的なもので、「一粒もムダにしないように」「ご飯を食べられることが幸せだ」と親からも学校でも教えられてきました。
私自身もそうでしたが、育ち盛りの頃はエネルギーはいくらでも消費しましたから太ることもありませんでした。そして、たくさん食べているうちに「炭水化物は美味しい」という記憶が脳にしっかり刻み込まれました。
これは私に限ったことではありません。日本人に限ったことでもありません。農耕技術が発達し、さまざまな炭水化物が行き渡り「主食」となったことで、世界中の人たちの脳に同様の記憶が刻み込まれたはずです。
さらに、18世紀にイギリスで起きた産業革命を経て、精製された砂糖が出回るようになると、人類の脳には「甘いものは美味しい」という強い記憶も加わります。
こうした流れに沿って人間が口にする物が変化していき、現代はとんでもないところに行き着いてしまったわけです。
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