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「入学後は同じ授業を受けるのに…」中学入試の合格ラインに男女で40点もの差、その正当性は?《関西にも「男女別定員制問題」》

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問題視され始めた入試の不平等

  ここまで、男子校から共学化した人気3校の男女別定員制について述べてきた。

  前述の通り、近畿圏の私立中学受験において、府県最上位を占めるほとんどが男子校であり、女子に門戸を開くトップ校が少ないというそもそもの問題がある。高偏差値帯の女子校も少ない中、女子受験生は共学校にすら扉を狭められ、男子よりも高いハードルを分かった上で、上記の共学校を受験するしかない。

 確かに、元男子校の共学化を経て受験可能な学校数の不均衡は縮小し、女子も厳しい競争さえくぐり抜ければ‟最難関校合格”の称号を勝ち取ることができるようになった。しかし、入学後に受ける授業は男子と変わらないはずだ。同じ学校で教育を受けるために越えなければならないハードルの高さが男女で異なるのは、性差別ではないだろうか。

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写真はイメージです ©iStock.com

「女子は男子よりも努力しなければ男子と同じ扱いを受けられない」。不平等な受験制度を、大人である教育者でさえ、取り立てて指摘してこなかった。

 その制度の中で受験勉強を頑張っている最中の生徒たちが、選抜システムの中にある不平等に自ら気がつき、異を唱えることができるだろうか。合格者最低点が違ったとしても、受験は一度きり。「女だから仕方がない」「文句を言ってもすぐには変わらない」と受け入れるしかなかったのではないか。

  実際に、過去の筆者らは受験のジェンダーギャップに鈍感な高校生だった。「どこそこの医学科は女子の合格者数を絞っているから女子は合格しにくい」と予備校で教えられても、そんなものだろうと思っていた。それでも良い点を取って受かればいいんじゃん、と思っていた。

  だから、2018年に医学科の不正入試が問題となったときには驚いた。2021年に都立高校の男女別定員制の是非が議論の俎上に上がったときにも驚いた。「私たちは怒っても良かったのだ、私たちは差別されていたのだ」と。

  私立中学が男女別定員制を採用するかどうかの判断は、私立校の裁量にゆだねられているのかもしれない。だが、その不平等な制度は、子どもを苦しめるものではないか。社会における教育機関の態度として、その是非が問われるだろう。どうか、真に公正な試験がすべての入学試験において実現することを願う。

※1 https://www.nichinoken.co.jp/np5/schoolinfo/pdf/r4/results/r4_2021_w_f.pdf
※2 本記事では『私立・国立中学受験 学校案内(2007年入試用/関西・中国・四国・九州版)』(2006年、日能研)中に記載のある、日能研による結果R4偏差値(入試結果から算出した、合格可能性80%ラインとなる偏差値)を参考としている。
※3 『2007中学受験用 私立中学への進学 関西版』2006年、教育・出版ユーデック、p.247
※4 
https://www.rakunan-h.ed.jp/to-candidate/admission/examinfo-junior/
※5 https://www.nishiyamato.ed.jp/wp/wp-content/uploads/2021/01/453433d47d466e1664ce2ca0bd933ad2.pdf
※6 https://nyuushi.shingakukan.com/nishiyamato.html
※7 https://nyuushi.shingakukan.com/takatsuki.html