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「鉄道は通りませんでした…」計画が二度も立ち消えになった“幻”の鉄道路線 「広浜鉄道今福線」を巡ってみた

「鉄道は通りませんでした…」計画が二度も立ち消えになった“幻”の鉄道路線 「広浜鉄道今福線」を巡ってみた

genre : ライフ, , 歴史

note

現地を訪れた人の言葉には……

 地域に遺された歴史を観光資源として利活用していく。

 文字にするのは簡単だが、そのアピールは一筋縄ではいかないことは想像に難くない。しかし、新旧未成線交差地点に置かれた「来場者記入用ノート」をめくると、次のような言葉が大量に残されていた。

 道路や案内看板がよく整備されており、車で廃線跡巡りをするズボラな私にも親切に感じられて、とてもよかったです。そして何より山中にこのような巨大な人工構造物が使われることなく遺されている様に圧倒されました。来てよかったです。

 もしも開通していたら? の世界を想像すると、とても不思議な気持ちになりますね。以前から見に来たいと思っていました。念願叶い最高です!

 全国でも市が中心となって保存活動が行われている未成線跡はここくらいでは? 全国的な広がりに期待しています! ロマンをありがとう。

 輸送手段としての路線こそつながらなかったものの、今福線の遺構が人々の思いをつないでいることは明らかだといえるだろう。地域にとってのかつての“負の遺産”は、いまや全国から鉄道ファンを集める“鉄道遺構”として、新たに陽の目を見つつある。

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今福線新線建設時に掘られた全長1633mの「下長屋トンネル」は通常立入禁止だが、イベント・ツアー・取材などの場合は立入が特別に許可される
自然と調和した未成線跡は「哲学の道」ならぬ「鉄楽の道」として訪問者に人気のスポット。今福線新線は浜田―広島間を55分で移動できる計画だったため直線的な線形が目立つ

 現在、今福線跡地では有志のガイドによる遺構見学ツアー(問い合わせ先は浜田市産業経済部観光交流課)も行われており、浜田市観光協会もさまざまな情報をインターネット上で公開している。石見銀山の雄大な光景を堪能し、日本海の海の幸に舌鼓を打つ山陰旅行はもちろん至福だが、それだけでなく、時が止まったかのように残された橋脚やトンネルを見て回り、神秘的で不思議な雰囲気を楽しむ「今福線」巡りも一興だ。

 写真=山元茂樹/文藝春秋

INFORMATION

浜田市観光協会
公式ホームページ https://www.kankou-hamada.org/
住所 〒697-0022 島根県浜田市浅井町777-35
電話番号 0855-24-1085

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。次のページでぜひご覧ください。

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