日本社会の本格的な移民社会化と矛盾多き技能実習制度、ベトナムという従来は付き合いが薄かった国の存在感の拡大という複雑な要素が絡まり合うなかで、コロナ禍が発生。警察や入管が疲弊し、急増する外国人がらみのトラブルに対応しきれなくなっているのも確かだ。
「情報感度の弱い若者」による事件
技能実習制度は事実上、ベトナムをはじめとした発展途上国の「情報感度の弱い若者」を誘い出して日本に送り込み、低コストで離職の心配がない労働力として充当する制度である。
もっとも、私たち日本人の生活水準はもはや技能実習生の労働力抜きでは維持できない(たとえばコンビニやスーパーの安価な惣菜を作っているのも技能実習生である)。上から目線で断罪するだけで済むような話ではないのだが、とはいえ明らかに問題がある制度であることも間違いない。
昨今、日本国内で相次いでいるベトナム人関係のトラブルの多くについても、最大の原因は技能実習制度の矛盾にあるだろう。ただし、技能実習生になる当事者たちは、ベトナム国内では決して優秀とは言えない層の人材だったりもする。
残酷な表現をすれば、これだけ問題だらけの制度なのにそれでも技能実習生として日本で働くような人は、事前に情報を調べたり損得を客観的に判断したりする習慣を持たない──。というより、教育の過程でそれを身に着けられなかった人がかなり多く含まれている。
後先を考えないで技能実習生になった人たちは、来日してから低賃金や職場環境の悪さに気が付き、やはり後先を考えず実習先を逃亡してボドイになる。その後は同胞に騙され、またケンカなどの短絡的な行動にはしる人もいる。おそらく龍ヶ崎事件の犯人・クィンもそんな一人だったのだ。
技能実習生やボドイ関連の取材を続けていると、どうしようもない現実にしばしば突き当たる。日本の移民社会の闇はあまりに深くて暗く、解決の糸口は見えない。