――山田邦子さんも、テレビに出るようになってはじめて「ブス」って言われたと。それまで家で「かわいい、かわいい」ってずっと言われてきたから、それが自分のことだとは全然思わなかったというお話をされていました。
彩 そう、普通に生きててほんまにないんですよね、ルックスのことをスポーンと言われるの。あと、一番覚えてるのが、初めてテレビに出た時に、大物司会者の方、子供の頃から好きで笑ってた方に「中途半端なタレ(※芸人用語で「女」の意)やな」って言われて。すっごい嫌でした。
――中途半端なタレ……。
彩 結構長い間、トラウマになりましたね。
幸 テレビで面白いことやりたいって思ってお笑いを始めたのに、「あっもうテレビ出たくない」って思ったんですよ。どうやってもこの土俵に上がったら、負け戦にしかならへん。そういうパズルが仕込まれてる場所やから、出たらあかんと思いました。
彩 そうそう。返す言葉もテクニックも何もないですし。もうこの場にいたくない!ってのが、すごかった。
何も変えられない……二人が考えた“全勝ち”する方法
――それは何年前くらいの出来事でしたか。
幸 15年前くらいですね。
――まだまだテレビが一番メジャーだった時代。
幸 そうですね。テレビ“様”ですね。
――夢から一気に現実が突きつけられて、この先どうやって進んでいけばいいのか……。
幸 まず、テレビに出るのをやめました。舞台でもっと力をつけなきゃいけないなって。
彩 一番嫌なんは、現状をどうにもできない力のない自分ですよね。力がないと、思うことを言ったところで、何も変えられない。変えられる自分になりたい、とひたすら思いました。
幸 強くならなきゃなって。そして強さというのは何かといったら、女に対してされる攻撃をうまく返すということももちろんなんやけど、一番はもう、ネタなんですよ。ネタがおもろかったら全勝ちできる。それは我々の信念みたいなものであって。
だからもう、面白い漫才を作ろうとしたんです。何年かかってでも、そこをまず強くなろうって。それで『M-1』をずっと目指してました。結果、決勝はいけへんかったけど。「ネタ面白い」が一番強い世界にしたかったね。
たぶんネタおもろかったらもう、その、“女のクソ仕事”と我々が呼んでる、女芸人用の仕事、こうへんなるやろうなと。そこでした。
――女芸人用の仕事というのは……例えばゲストに若手イケメン俳優が来た時にキャーキャー言わなきゃいけないとか。
彩 やたら恋話求められたりとか。
幸 あれはなんなんですかね(笑)。単純に男芸人の方が恋愛エピソードいっぱい持ってるやろうと思いますね。でも女といえば恋愛話、みたいなのはある。刷り込みですよね。
――女性芸人に対する「どの男芸人が好き?」も多いですよね。
幸 あれ一番困るんですよ。
彩 好きじゃないしな、ほんとに。