「我々じゃないやん。それ、『女』の仕事やん」と驚いた
――駆け出しの頃、テレビにおいて女芸人は、芸人の仕事を求められてないという事実にショックを受けたというお話をアーティストスポークンでされていましたよね。
幸 吉本の養成所時代に、やっぱり双子で女だとちょっと目立つから、ポツポツテレビの仕事が入ってたりしてたんですよ。
ほんならスタジオでこう、誰かが下ネタを言うと、パン、とカメラが女の人の顔を抜く。その時には「やだあ、もう」みたいな顔したり、なんかリアクションとらなあかんのやけど、自分にその役が回ってきた時に、めっちゃ無表情で。編集で絶対落とさなあかん顔しといたったんですよ。
彩 カメラマンが睨みましたよ。
幸 さらに先輩に「オクレさん(Mr.オクレ)にケツ触ってもらえ」みたいなことを言われて。
彩 「それが登竜門だから」って。
幸 ボケてやらなくちゃだめなんですよ。だけど23歳のNSC生だった自分らは、そんなセクハラをバッとふられた時に「なんで?」って思ったんですよ。この言い方で合ってるかわからんけど、「我々じゃないやん、それ『女』の仕事やん」って思ったんですけど。
――テレビが女性に求める仕事。
幸 自分はその「女の仕事」、やらんでいい人だって思ってたんですよ。
彩 思ってた、思ってた。
幸 で、その時に「ああそうか、人からみたら、そうか」と思った。今まで自分のこと女と思ったことなかったんです。
彩 なんかね、うぬぼれてたんですよ。
幸 うぬぼれてた……というのかちょっとわからないですけど。特別な存在やから、そういうセクハラめいたこととかやらんでいい。特別な面白い出番があるはず。勝手にそう思ってたんですよ。
ほんなら、もうごりごりに女として見られるし。男の芸人から「この中で誰と付き合いたい?」みたいなこと聞かれるし。なぜかルックスの評価から入るし。「あっ女の人がされること、全部されるんや」と思って。ショックでしたね。自分はそこすり抜けて生きられるかなというのが、あっ生きられないんだって知ってしまった。
ほんまにいらんやんということをね……例えば「おっぱい小さいな」とか。まずそのおっぱいを売ってないから「え?」って思うんですよ。全然いらん用事を当たり前のように言われることに対する疑問というか、よその女にやってることを、自分にされてる不思議感みたいな。そこはある。
――「自分は女じゃないと思ってた」という感覚は、すごく分かります。
幸 基本思ってる。
彩 でもこの世界ではそうは見てもらえてないんだっていう感じですね。