――「女芸人は男芸人のことを好きなはず」という構図は、女芸人はみんな元々お笑いファンという思い込みからきてるのかもしれません。
幸 それも若手の時言われました。「自分ら追っかけあがりやろ」って。「誰追っかけてたの?」って。「若い女の子が入ってくる=追っかけあがり」って思うんでしょうね。
彩 当たり前のようにそう勝手に思ってはるんです。
――そういう思い込みが無数にある。
幸 そうですね。でも、『M-1』獲ったら一夜で全てを変えられるというか、オセロで全部ひっくり返るやつがほんまにできると思ってたんですよ。『M-1』で結果出す、ネタで結果出すが一番の近道やと思ったんです。周りからしたら、それが一番遠回りって言われるけど。いやこれしかない、これだ、といって行きましたね、一昨年までは。
2ちゃんねるに書かれ…ネタに対する当初の“拒否反応”
――しかしDr.ハインリッヒさんのネタは、今まで見たことのない視点のものだから、初見ポカンとなる人も多いかもしれないですよね。お客さんからしたら、女性で双子で、でも全然それと関係ない不思議な世界が展開される。そんなお客さんの戸惑いって、舞台上で感じるものですか。
幸 えっとね、お客さんの反応はやっぱり「?」なんですよね。
彩 ちょっと情報量が多いから。出てきた時、やっぱり処理してほしいと思われてる(笑)。
幸 昔はいなかったですしね、こんな感じの女の人。女の人で、パンツスーツ着て。
――あんまりいないですね。
幸 わりと明るい服をみなさん着てる中、我々が現われたもんだからもう気持ち悪かったんだと思いますね、最初は。賛否両論でもキツいほうのが多かった。
彩 好きな人はめっちゃ好きになってくれるけど、否の人もたくさんいて。自分らの周りの芸人でも、誰もそこまでの目に遭ってへんぐらい嫌なことは言われてましたね。あんまり見たらあかんなと思いました、2ちゃんねるとか。お笑い好きや同業者からも言われてました。
――なぜなのでしょうか。
彩 そうですね……嫉妬も多いと思います。たぶん女の人の脳みそからこんなこと出るって思いたくないんでしょうね。「そんなことを女が思いつけるんか」って書かれてましたから。ネタに対する嫉妬や意地悪な感じはありました、正直。
――自分の思考のテリトリーを超えるものが出てくると、人間って攻撃してしまうものなのかもしれないですね。双子の女性が舞台に出てきて、ぶっ飛んだ世界を展開し始めて、不安が攻撃に変わる。
幸 たぶん男の芸人だったらここまで言われてへんかっただろうなと思います。我々のネタって、哲学的やったりする部分があるので、そういうのを若い娘に言われるのがなんか許しがたいと。要するにこういうネタが思いつくことも許せへんし、みたいな波動は感じてました。