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山田重雄の尋常ならざる執念
山田はそれ以降、狂気ともいえるバレー人生を歩むことになる。
今であれば、銀メダルなら誰もが賞賛する。しかし当時の女子バレーにとっては、金メダル以外なら最下位も同じという意識だった。山田は銀メダルの責任を取り、全日本監督を退任した。
だが、ただ手をこまねいているわけではなかった。次のチャンスに備え、ソ連を打倒するためにはギビ監督を丸裸にする必要があると考え、あらゆる手段を講じてソ連の名将を調べ上げた。
東ドイツ経由でソ連の反ギビの立場の人物に接し、生い立ちから家族構成、性格、考え方まで情報を取った。あるいは日ソ対抗で来日したギビからひと時も離れず、買い物や食事を付き合いながら、人となりを観察。試合では、ギビが座る椅子の後ろに隠しマイクを設置し、選手にかける言葉も拾った。日立監督に就任当時、小島を調べ上げた手法を、ライバル監督に講じたのである。
だが、執念にも似たこうした調査の成果を得るのは、8年後のモントリオール五輪まで待たなければならない。