1ページ目から読む
4/4ページ目

「この病院はご飯をくれない!」と文句を言っていた当時の私

 ナースステーションの前の4人部屋に移っても、私の試練は続きました。

 何しろ周囲は脳に障害のある患者ばかりなのです。

 消灯時間になると、カーテンを閉めて眠るのですが、私のいる4人部屋だけはナースコールのサイレンがずっと鳴りっぱなし。なのに看護師さんがなかなかこないので、うるさくて眠れません。たまに看護師さんがきても、帰るとすぐまたナースコール。同室の患者さんがしょっちゅうナースコールを鳴らすのです。「○○さーん、200円あげるからきてー」。

ADVERTISEMENT

 

 私はずっとおとなしくしていましたが、ついに我慢できなくなり、深夜、ナースステーションに窮状を訴えに行くことを決意しました。ところが部屋を一歩出ると、廊下には男性患者が大きな声で喚きながらウロウロしています。私は呆然となりました。

「脳神経外科の看護師さんやお医者さんは大変だな」と思いましたが、そう思っている私自身も普通じゃなかった……。

 旦那の日記によれば、当時の私は「この病院はご飯をくれない!」と文句を言っていたそうです。病院が食事を出さないはずはないので、記憶が飛んでいたのでしょう。なんと恐ろしい。

※最新話は発売中の「週刊文春WOMAN 2022年 創刊3周年記念号」に掲載中