くも膜下出血の手術後に脳梗塞を起こしてから20日あまり。

 うまく言葉を発することができない私の口から小2の娘と中1の息子の名前がこぼれ出た。(全14回の14回目/#1#2#3#4#5#6#7#8#9#10#11#12#13より続く)

清水ちなみさん ©佐藤亘/文藝春秋

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 ここらへんでナースステーションからちょっと離れた部屋に、やっと引っ越しです。旦那に「うるさくて眠れない」と言いたかったのですが、当時の私は何でも「お母さん」か「わかんない」に変換しちゃうので、言いたいことが伝わりません。部屋を変えてもらうのにも一週間ぐらいかかりました。

 病院のベッドには車輪がついているので、ベッドに横になったまま移動することができました。移ったのは同じ4人部屋で、大して距離は変わらないのに、ナースステーションのサイレンが全然聞こえません。なんて快適な生活なんでしょう!

 その静寂さと言ったら、工事現場の作業員やトラック運転手から、リゾートの客になったみたいで、私は舞い上がってしまいました。

年末年始に一時帰宅。当時の録音を聞いてみると…

 旦那の日記によると、クリスマスの頃には「普通に歩いてる!」。リハビリの効果があらわれ、栄養も点滴ではなく、口から摂れるようになりました。トイレも自分で行けます。

 忘れられないのは、一般病棟に移って初めて食べた「おかゆ」がとても美味しかったこと。集中治療室では流動食さえ食べられなかったので、心底美味しいおかゆでした。

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 12月26日には、何度かテレビで共演したことがあるマラソン解説者の増田明美さんがお見舞いにきてくれました。有名人の来訪に周囲がざわつきます。

 12月27日には、なんと一時帰宅することができました。3日間滞在して問題がなければ、そのまま自宅で年を越せるということです。

 一時帰宅した際に、記録魔の旦那が私にインタビューした録音が残っています。前号で紹介した12月16日の録音に比べると、ほんの少し語彙が増えていることがわかります。