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「マカロフで腹へ向けて1発」「仲間に撃たれメガネのレンズが眼に突き刺さり」小日向将人死刑囚が綴る『前橋スナック銃乱射事件』の凄惨な一部始終《獄中手記250枚》

前橋スナック銃乱射事件#4

genre : ニュース, 社会

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逡巡する小日向に矢野は「みんなやっちまえ」

 スナック付近に到着すると、「ほかには誰もいない」と聞いていたにもかかわらずボディーガードとみられる男が2人いた。店の中にもターゲットである後藤組長だけでなく一般の客がいる可能性があったため、小日向と山田は相談の上、矢野に中止を訴える電話をした。

前橋スナック銃乱射のために潜伏していたアジトの周辺 ©️文藝春秋 撮影/上田康太郎

《すると矢野会長は、「ちょっとまってろ」と言って、いったん電話を切ってしまいました。矢野会長には密偵君(スパイ)から情報が入っているはずでしたからこのことを確認したようでした。すると少し経って矢野会長から電話がかかってきて、「店の中にいるのは3~4人だ」「みんな後藤の仲間だから」「一般の客はいない」「みんなやらなきゃやられるぞ」「みんなやっちまえ」などと言って、みんな殺すように私に指示してきたのです。矢野会長はこのほかに、「ボディーガードとか、店の中にいる奴とか後藤とかみんな道具(※拳銃)を持っているだろうから注意しろ」「ゲームだから、ゲームゲーム」とも私に言ってきました。

 

 このような店内にいる人たちがみんな後藤の仲間だというのはかなり危険な状態で、矢野会長は、健太郎さんや私が撃ち合いになって死んでしまってもかまわないと考えているのだと思いました。私たちの安全を優先して考えるのではなくとにかく後藤を殺したいだけなんだなと思いました。

 

 私は矢野会長の若い衆になったことを後悔しました。このまま逃げてしまおうかとも思ったのですが、もし見つかった時どうなるか。指をつめるだけではすまないのはあきらかですし、家族を残していけば家族を危険な目にあわせてしまうし、連れていくにも子供が産まれた時に、矢野会長から「おめでとう」の一言もなく逆に、「子供がいるやつは逃げてもすぐわかる。子供は学校に行くんだから調べればすぐにわかるんだ」と、脅されました。こういう事を考えると逃げるわけにもいかず、どうにもならなくなりました。進退きわまるとは、このようなことを言うんだなと思いました。行くのも地獄、帰るのも地獄、なぜこんな目にあわなければならないんだと強く思いました》

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 そしてついに小日向と山田は襲撃実行を決心する。外にいるボディーガードを小日向が殺し、ターゲットである後藤組長を殺すべく山田が先にスナック内に入ることなどを打ち合わせ、足を踏み出した。

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