「六代目山口組」の分裂以降、離脱した一派「神戸山口組」と「六代目山口組」との間で発生した対立はいまだ収まっていない。果たして両者の力関係は、具体的にどのような形になっているのだろう。
ここでは、日本社会が抱えるさまざまなタブーに、各ジャンルの有識者が切り込んだ『日本のタブー3.0』(宝島社新書)の一部を抜粋。暴力団事情に精通するジャーナリスト鈴木智彦氏が明かす、最新暴力団事情を紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)
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終わっていない報復
コロナ禍で延期となったが、2020年はオリンピックイヤーだったため、当面、派手な事件は起こらないと推測されていた。国際的な行事が開催されている期間に抗争事件を起こせば、世界中のマスコミがそれを報じ国際問題になりかねない。警察のメンツを潰せば、ただでさえ厳しい取り締まりが激化するからだ。
かつての山一抗争でも似たような状況はあった。1985年1月、山口組のトップである四代目山口組・竹中正久組長が一和会のヒットマンによって暗殺されたが、この年の夏、神戸市で学生オリンピックであるユニバーシアードが開催されたため、双方休戦を宣言していた。
岡山で抗争が再燃した(編集部注:2020年5月に、「神戸山口組」傘下組織であった指定暴力団「池田組」の事務所近くで、特定抗争指定暴力団山口組系「大同会」幹部による銃撃事件が起きた)のは因縁を感じさせる。いや、狙ったものかもしれない。2016年5月31日、六代目山口組弘道会のヒットマンに池田組若頭が射殺され、その報復が終わっていないからだ。
「殺られたら、殺り返すのがヤクザの喧嘩。たとえ幹部を殺せなくても返し(報複)の意思表示をしなくてはナメられる」(他団体幹部)
池田組はさらに負債を増やしてしまった。
壊れだした神戸山口組
神戸山口組最高顧問だった池田孝志組長の心はとっくに神戸山口組から離れていたのかもしれなかった。神戸山口組では池田組のほか、有力団体の宅見組なども、離脱はしないが積極的に動こうとはしていない。
神戸山口組は壊れだした。