1ページ目から読む
3/4ページ目

「そんなキャラ、すぐ飽きられて終わる」

――なかやまきんに君の誕生。 

きんに君 当時はトレーニングする人って、「頭まで筋肉」とか「何のためにやってるの」とか、ちょっと変わった人という扱いでした。今よりもずっと居心地は悪かった。筋肉で少し目立ち始めても「そんなキャラ、すぐ飽きられて終わる」ってストレートに言われてましたね。

 それに、あの頃の大阪は漫才かコントをがっちりしないといけない空気だったんですね。ショートコントすらダメな時代だったんです。 

ADVERTISEMENT

――よくケンコバさんが話す、とにかく尖っていた90年代大阪お笑いシーンですね。 

きんに君 そう。そんな中でキャラでワーっていって、一発ギャグしてってやつ、いなかったんですよ。悪気はないんでしょうけど、吉本の社員さんにも「どうせインストラクターとかになるんでしょ」と言われたり。僕は本気でお笑いをやろうとしてたけど、こんなんじゃ無理なのかな、って迷いもありました。そもそも参考になる先輩もいないですし。ただ、何かが起きるかも、っていう予感だけでした。

 これは男性目線からの考えですけど、みんなが筋肉に憧れる時代は絶対来るし、完成した体はやっぱりかっこいい。筋肉とお笑いを掛け合わせたら、何かが起きるかもしれない。 

 

――たくさんの芸人さんがいる中で「どう自分をアピールするか」というのも非常に戦略的ですし、それを継続させるというのもすごいと思います。 

きんに君 たまたまって言ったらあれですけど(笑)。ただ、「筋肉留学」も、自分としてはその延長のつもりでした。 

――2006年に仕事を一旦お休みにしてロサンゼルスに留学された。 

きんに君 今回の吉本退所も、あの時と近いものがあります。いつも3年から5年ぐらい先を考えるんです、わからないなりにも。安心する中にいたら、3年か5年経った時に、徐々にフェードアウトしていく気がするんです。だから、大きな夢を掴むには一旦爆発させないと。

 それは無謀なんだけど、どこかに自信もあります。養成所に入るときって、現実を知らずに、根拠のない自信をみんな持ってるわけですよ。それと同じような感じで、アメリカに行った時も、僕はハリウッドのオーディションに受かるという根拠のない自信がありました。この筋肉と、日本からわざわざ来た感じ、それをアメリカでやったら何か起きるんじゃないか。

 実際、自分で英語のショーをやったり、映画作って上映したりしてたんですけど、めちゃめちゃウケてはいたんです、自己評価ですけど。条件さえちゃんと揃えば絶対いけるっていう自信が、今もどこかにあって。