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8割以上の日本人が待望する“愛子天皇” それでも“男系の天皇”を守るために慎重になる必要がある理由

8割以上の日本人が待望する“愛子天皇” それでも“男系の天皇”を守るために慎重になる必要がある理由

2022/02/23
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 その後も歴史を紐解けば、日本人は男系天皇を維持することに凄まじい執念を発揮してきました。たとえば江戸時代後期、22歳の若さで崩御した後桃園天皇の跡継ぎには、かなり遠い傍系の閑院宮家から後の光格天皇を先帝の養子として迎えています。後桃園天皇には一人娘の欣子内親王がいましたが、何代も遡ってまで男系の血筋にこだわったのです。

秋篠宮さま、佳子さま、悠仁さま 宮内庁提供

 そんな紆余曲折がありながら男系の血筋をなんとかつないできたことの重みを考えれば、直系の悠仁さまがいらっしゃる以上、議論を急ぐべきではないという考えは自然なものだと思います。

エリザベス女王が君臨するイギリスとの違いは?

 女性天皇、女系天皇についての議論では、エリザベス2世が女王として君臨するイギリス王室が引き合いに出されることも多いようです。女王エリザベス2世は1952年に即位してから95歳の現在に至るまで実に70年も在位しており、国民からもおおいに支持されています。しかし、日本とイギリスでは、歴史が全く違うのです。

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愛子さまのご成年祝賀行事に臨まれる天皇陛下、皇后陛下、愛子さま 宮内庁提供

 イギリス王室も長い歴史を持ちますが、ヨーロッパの歴史は武力で互いの領土を侵略しあうものでした。イギリス内部もスコットランドやウェールズなど4つの国に分かれていた上に、隣国フランスと長らく戦争を繰り広げ……と支配したりされたりの連続でした。血みどろの歴史の中では王位の空白は、隙あらば王位を簒奪しようと狙う野心家の有力領主や他国がつけいる絶好の機会となります。そこで領土や王朝を守り権力を保つことを最優先するため、王位をとにかく血筋の近い身内に譲ることが肝要でした。男子に限らず娘に受け継ぐ、あるいは女系に受け継ぐという事例が12世紀頃には既に見られます。

 一方、日本は江戸時代末期の1853年にペリーが黒船に乗ってやってくる以前、海外から明確な攻撃を受けたのは1200年代の元寇が最後。500年以上も外部から攻撃されずにいたために、ひとつの国に“万世一系”という純粋性を守ることができたのです。

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