ではそもそも、「男系天皇」はなぜ重要なのでしょうか。そのキーワードとして天皇の“純粋性”を挙げたいと思います。
天皇は万世一系であり、長きにわたって男系で血筋をつないできました。女性天皇も、男系天皇の娘です。父方の血筋をたどれば、初代神武天皇まで真っ直ぐに遡れるとも言われています。
この純粋な血筋によって天皇は日本人にとって時代を超えた唯一無二の存在となりました。江戸時代までは御簾の向こうの存在であり、明治以降、公の場に姿を現すようになってからも直視してはいけない“現人神”として神格化されてきました。現代の天皇は神格化された存在ではありませんが、この“純粋性”を求める気持ちは国民の中に今も息づいているはずです。
神道では女性は“穢れている”とみなされる部分がある
男系と女系に差をつける考え方は、ジェンダー平等が広まった現代においては時代錯誤だという意見もあるでしょう。しかし、いまも古式に則って宮中祭祀を粛々と行っている皇室では、神道における宗教観が強く影響しているのです。
日本書紀に登場する「国産み」では、妻のイザナミが亡くなり「黄泉の国」へ旅立ちますが、寂しく思った夫のイザナギが現世に帰って欲しいと訪ねてきます。ところがイザナミはすでに醜く腐り果て、その姿にイザナギはショックを受けてしまいます。
また神道では 血 を “穢れ(けがれ)”の象徴として考えていました。女性は経血や出産で血を流すことから、神話のイザナミのエピソードとともに、女性は 穢れているものとされたのです。
2017年世界遺産に登録された九州の“神宿る島”沖ノ島(宗像大社の沖津宮がある)は、女性の上陸が厳しく禁じられています。女性に対する“穢れ”の意識は少なからず今も残っています。