ついに、彼の番か。トップスターとして愛されてきたウィル・スミスが、今年のオスカーで主演男優部門の最有力候補と考えられているのだ。

 作品賞など6部門にノミネートされた、実話をもとにした映画『ドリームプラン』で演じるのは、リチャード・ウィリアムズ。テニスプレーヤーのビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹の父親だ。

ウィル・スミス © 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

 白人中心のテニス界で、裕福とはほど遠かった姉妹が世界チャンピオンにまでのぼりつめることができたのには、テニス未経験ながらも、やや偏屈で押しの強い、この父親の奮闘があったのである。

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「あの一家がやったことは、本当にすごい。こんなことは二度と起こらないだろう。リチャードは、娘たちが生まれてくる前に、『世界で1位と2位のテニス選手を育てる』と決め、実行した。どんな障害も克服し、誇らしげに『ほら、言っただろう』というプラカードを掲げて会場に行ったのさ。この話を世界に届けることができて嬉しいよ。僕のキャリアの中でも、これは最高の光栄だ」

 リチャードについての最初の記憶は、駆け出し時代のビーナスのインタビュー中、質問が気に入らず、割って入ってきたときの映像だった。

「この映画の話が来たとき、まず思い出したのは、そのことだ。当時は13歳か14歳だったビーナスのあの顔が忘れられなくてね。彼女はまるでライオンに守られているかのように、安心した、余裕の表情を浮かべていた。僕が娘を守ろうとしたとき、娘もあんな顔をしてくれたら、いいね」

 そのシーンは本作にも出てくるが、スミスは撮影に入る前から、この脚本にすっかり魅了されていた。

「脚本の最初の10ページくらいまでに、鏡の前で実際にセリフを言ってみるかどうかでわかるんだよね。今作では頻繁にそれをやったので、読み終わるのに5日もかかってしまったよ。僕の父親は元軍人で、家族の絆、まじめに努力することを強調する人だった。だから、リチャードという人はすごくわかった。読んでいるうちにも、今すぐ撮影現場に入りたいという強い情熱に駆られたものだ」

 エグゼクティブ・プロデューサーには、姉妹に加え、彼女らの姉イシャ・プライスも名を連ねる。残念ながらリチャード本人はかかわらなかったものの、彼女らや、彼女らの母からたっぷり情報を得ることができた。

「姉妹から、リチャードはよく平気でおならをすると聞いたので、僕はこれでお許しが出たぞと言わんばかりに、現場でおならをしてみせたんだ(笑)。あれは大受けしたね」

 三姉妹も母も、この映画を心から気に入っている様子。しかし、肝心の本人が見たのかどうかというと……。

「2週間ほど前にまたセリーナに聞いたんだが、『わからないのよ。見たのに何も言わないだけかもしれないし』ということだった。いかにも彼らしいよね。とにかく、僕が一番認めて欲しい人は、まだ見てくれてもいないんだ」

Will Smith/1968年、フィラデルフィア生まれ。ミュージシャンから俳優に転向。代表作に『インデペンデンス・デイ』『メン・イン・ブラック』『ハンコック』など多数。『ALI アリ』『幸せのちから』でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。

INFORMATION

映画『ドリームプラン』(全国公開中)
https://wwws.warnerbros.co.jp/dreamplan/