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「もう、嫌!」というぐらい続く検問

 ルスランとイゴールにはさまれたままフォードは、まだリビウの街中で渋滞につかまっていた。リビウは22時から翌朝6時まで外出禁止である。皆家路を急いで渋滞が発生……しているのではない。幹線道路に張り巡らせた検問のせいである。ロシアの破壊工作や後方かく乱、またウクライナ軍や政府に対する非合法情報収集、さらにスパイ活動を警戒しているのである。

 かくいう不肖・宮嶋もさっきホテルをチェックアウトする際にはロシア政府発行の古いアクレジテーション(プレスカード)をフロントに預け、ウクライナ側の検問であらぬ疑いがかからないようしたぐらいである。今は戦時である。疑われたら終わりである。

「急ごう」

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 フォードはいきなり中央よりに車線変更するや、緊急車両用に空けていると思われる車線から渋滞の列をごぼう抜きしていった。やっぱ普段は救急車や。このフォード。

 しかし救急車のスピードのご利益があったのは最初の検問所(チェックポイント)までであった。検問所はこれ以降「もう、嫌!」というぐらい続く。もうオーバーやなく、何十回、ワシも30回まで数えてやめた。

リビウ駅 撮影・宮嶋茂樹

平時なら約5時間のドライブが、今は15時間以上

 イゴールいわく、平時ならリビウーキーウは直線距離約500キロ、約5時間のドライブである。それが今は15時間以上である。それはロシア軍近くの危険地帯を迂回し遠回りになることと、このすさまじい数のチェックポイントを通過しなければならないからである。

 検問所で必要な書類はイゴールとルスランの二人は「パスポルト(身分証明書)」。しかしこのパスポルト今はデジタル身分証明書。スマフォをピッと見せるだけ、あとは積み荷リストや車検証みたいなもんぐらい。ただし時々積み荷を全部やないが、ランダムに開けさせられる。これも時間がかかる。

 それで一番不審がられるべきワシなんやが、これがまあルスランの「ヤポンスキー、フォトコレスポンジェント(日本のカメラマン)」の一言で顔パスで済むこともあれば、「コンニチワ」と話しかけられたり、旅券出す前にプレスカード見せるだけで済むことが多かった。

 しかも内地では全然出番のない、ワシも会員になってる日本写真家協会発行の海外用プレスカードというまあレアなカードがもの言うたのである。これ読んだら野町和嘉会長もお喜びになるこっちゃで。こりゃあ、どう考えてもウクライナ人は領土をロシアに奪われた者同士として親近感をはじめから持っているからとしか考えられん。