Forbesのコラムニストであり、ドローンの軍事的価値を高く評価するデビッド・ハンブリングですら「ウクライナはトルコ製の武装ドローンTB2を導入したが、ロシアはドローン対策を進めている上に大量の戦闘機を保有している。その為、ウクライナとロシアはダビデとゴリアテではなく、ゴリアテも投石器を装備している状態だ」と述べていた。
筆者自身は、ドローンは正規戦でも通用すると繰り返し主張してきたが、それでもこのあたりが妥当なラインだろうと考えていた。つまりドローンは活躍するにしても、あくまでもTB2が中心だと考えていた。
下馬評を覆し、ウクライナ軍の戦略・作戦レベルでの優越の助けとなった
しかし蓋を開けてみれば、トルコ製武装ドローンだけでなく、ウクライナ製の武装ドローンまでもが戦果を挙げているとされる。おまけにヤマダ電機で売っているような民生ドローンもロシア軍の上空を自由自在に飛んで敵を発見し、攻撃を誘導している。
ここでTB2の戦果を紹介しよう。高名な軍事情報サイトOryxが公開された動画から集計した数字は次の通りになる。装甲戦闘車両4両、火砲5門、多連装ロケット砲1両、地対空ミサイルシステム10基、指揮所2か所、通信施設1か所、ヘリコプター9機、燃料輸送列車2両、トラックやタンクローリーなど車両24両(いずれも3月23日現在の累計)。
これはウクライナ軍が公開した、もしくはリークされた映像からの累計であり、実際のTB2による戦果はこれを上回る可能性が高い。一説には6億ドル以上の損害を与えたというのだから、TB2のコスト優位性は確かなものだ。
Ukrainian Bayraktar TB2 drone strike on a Russian Pantsir surface-to-air missile system. pic.twitter.com/wNs82EzB9P
— Visegrád 24 (@visegrad24) March 1, 2022
ドローンが脆弱な兵站を切断
逆に確実に撃破されたウクライナ軍のTB2は現在1機しかなく、大量撃破したと主張するロシア軍ですら本体である管制車両の撃破は主張していない。
ここで注目すべきなのは、武装ドローンTB2がロシア軍の防空網に穴を開けながら、トラックやタンクローリー、燃料輸送列車などの兵站線を集中的に攻撃している傾向がみてとれることだ。
つまり、ドローンが防空網の隙間から地対空ミサイルや電子戦システムを撃破し、その穴をさらに大きくすることで有人戦闘機が飛行し、ドローンがさらに活躍できるようにしている。また、ドローンだからこそ後方の戦線に悠々と侵入し、脆弱な兵站を切断している。イギリスのベン・ウォーレス国防大臣は「ウクライナは無人機を使った非常に巧妙な戦術を実行し、ロシア軍の侵攻を遅らせている」と指摘している。