これらの戦術は、アゼルバイジャン軍が同じTB2によってアルメニア軍を撃破したナゴルノ・カラバフ紛争でも同様に採用されていたことも信ぴょう性を高める。
現代戦は戦闘の様相を紹介し、優勢をアピールする形が主流に
また中国のDJI社製を始めとする民生ドローンの活躍も無視できない。ウクライナ国内外から大量に寄付された民生ドローンを使って歩兵部隊や市民がロシア軍を偵察し、砲撃を誘導する砲兵観測までしている。火炎瓶などの爆発物の投下も行っている。
これらの戦術は中東やウクライナの武装組織が過去に行ってきたが、正規軍同士の戦いで用いられるのは初だろう。
民生ドローンはロシア軍の市街地への攻撃やその結果も撮影しており、武装ドローンによるロシア軍の撃破映像と合わせてSNSを通じて世界中に公開され、国内にあっては士気を高め、また国際世論に訴えかけてウクライナへの支援を引き出している。現代戦はこうした“映像の力”、特に戦闘の様相を紹介して優勢をアピールする形が主流になりつつある。
まさにドローンは戦略及び作戦レベルにおけるウクライナの優勢をもたらした「ゲームチェンジャー」なのだ。もしドローンがなければ、ロシア軍の航空優勢掌握をここまで防げなかっただろう。ロシア軍最大の弱点である兵站の細さに致命的な打撃を与えることもできなかった。
なによりも地上戦ではドローンの有無は決定的な情報格差を生む。ロシア軍を伏撃するウクライナ軍の映像が多数公開されているが、ロシア軍の動きを完璧につかんでいるからこそ可能な技だ。
️🇷🇺⚡️🇺🇦War Day 5
— Military Rage (@militaryrage) February 28, 2022
Ukrainian UAV Bayraktar TB2 strikes the railway train with fuel.#Ukraine #Russia pic.twitter.com/q5z9zRNf02
ドローンが活躍している3つの理由
では、なぜドローンは戦局に影響を与えるほどに活躍しているのか。
第1にドローンは捕捉・識別・撃破のいずれも困難だからだ。ドローンは低速かつ小型であるため、在来兵器を対象とするレーダーでは捕捉しにくい。歴戦の打者がチェンジアップを打てないようなものだ。しかも低空で飛行するためにレーダーとドローンの間に山や都市があれば捕捉できない。
特にTB2は斜め下からのレーダー反射が最低限になるようにデザインされており、地対空ミサイルに対する一定のステルス性もある。TB2の推定RCS(レーダー反射断面積)はもっとも少ない数値で0.3だが、自衛隊も保有しているF15有人戦闘機のそれは25であることを考えれば、その低さが分かる。