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「なんで今頃、と正直思いましたよ」
吉原は当初、柳本の申し入れを受けるつもりはなかった。
そもそも吉原は、常にVリーグで活躍し毎年のようにベスト6に選ばれ、最高殊勲選手に輝いたこともある。いつでも日の丸を背負う準備はしていた。廃部になったダイエーから東洋紡に移籍したのも、シドニー五輪をにらんでのことだった。
だが年齢制限という規定で外された。
「なんで今頃、と正直思いましたよ。危機的状況になったので『君の経験がほしい』ということでしょ。ご都合主義もいいところ、と心の隅では思ったけど、自分の感情を出している場合じゃないと考えたんです。再びオリンピックの出場を逃せば、もう女子バレーは這い上がれないと思った。1回逃したのを取り戻すのと比べ、2大会、3大会出場しない穴を埋めるのはその何倍もエネルギーがいる。傷が浅いうちに修復した方がいいと考えて、私で役立つのであれば頑張ってみようかなって」