「しかし未だ安全とは程遠く、皆さんジャーナリストを案内するのは月がかわってからになりそうです」
それまで待てないのがワシらである。東洋の島国では自称・専門家やの、有名ジャーナリストやの弁護士やのが「降伏せえ」やのウクライナの民の「民意」を無視したかのようなヘタレ世論が幅をきかせているのである。
キーウにいる日本人スチールカメラマンは不肖・宮嶋一人だけ
今も満開の桜の下で平和の惰眠をむさぼる日本人にいかにウクライナの民が圧倒的不利な逆境を跳ね返し、首都を死守し、敵を追い払ったかを記録、伝えるのは今ここキーウにいる報道に関わる者の務めであろう。
しかし、しかし、信じられるか?
今キーウには日本の新聞記者や大テレビ局のクルーが一人もいないのである。この侵略戦争における地球規模の反人権犯罪行為に新聞もテレビ局も全く興味ないかのように……。
この大量殺戮をその目で見て真実を追及しようとする新聞記者やテレビ局レポーターが一人もいない。そんな新聞社やテレビ局に愛想をつかしやめてきたというガッツのあるフリーの記者なら来ているが……。
実戦いうても自称戦場カメラマンの架空戦場とちゃうで
一方、ウクライナの気合の入った若きジャーナリストは日本のジャーナリストと全然ちゃう。イヴァンはロシア軍の侵略がはじまってからの戦闘で右足を負傷しているし、ほかのスタッフ全員も実戦を経験しているのである。
実戦いうても自称戦場カメラマンの架空戦場とちゃうで。2014年のクリミア紛争以降ウクライナはずうっと戦禍やったのである。彼らが協力してきたドローン撮影はウクライナの勝利のために貢献するという自負が彼らの表情に現れていた。
さて、話もまとまったところで、早速電話でも説明したようにワシはこうきりだした。
「実はボディーアーマー(防弾チョッキ)も鉄パチ(防弾ヘルメット)も持ち合わせていないんだが……」
そうなんである。チョッキに鉄パチなんぞしょせん気休めなのである。死ぬときは死ぬし、助かるときは助かる。シリアで殺された山本美香氏はチョッキしょってたが、その隙間の首に銃弾を受け即死した。長久手の立てこもり事件では特殊部隊SATの隊員ですらチョッキの隙間に357マグナム弾をぶち込まれ20代の若さで亡くなった。しかしこういう戦地でのエンベット(従軍)取材では必須のアイテムである。これをしょってないと同行取材が認められない。