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市長や村長などがロシア軍により家族ごと次々と誘拐

 また、病院や学校といった非戦闘員の民間人が利用する施設への爆撃・砲撃を行い、2014年のクリミア危機でウクライナ側に立って参戦した元兵士やウクライナ国章などの入れ墨のある人物も多数銃殺したと見られます。つまり、ロシアの言う「非武装化」や「非ナチ化」「非民族主義化」というお題目には、今後ロシアに敵対して反乱を起こす可能性のあるウクライナ人は全員殺害しようという強い意志があるのでしょう。

 そればかりか、ウクライナ東部の市長や村長などがロシア軍により家族ごと次々と誘拐され、さらにそれとすぐ分かるように殺害されているとの報道も出るに至ると、シベリア抑留による犠牲者を出した経験を持つ日本が一連の問題についてロシア側を擁護したり、譲歩したりする余地はどこにあるのか真摯に悩んでしまうぐらいの状況になります。

ロシア軍が首長11人拘束 ウクライナ副首相:時事ドットコム
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022040300419

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ロシア軍が撤退した キーウ近郊の町ブチャの街は徹底的に破壊され、多数の民間人の遺体が見つかった ©AFLO

軍隊が国民に対して行ってきた残虐行為

 これらの蛮行は、過去にはチェチェン紛争やジョージア侵攻(南オセチア紛争)、またシリア内戦でも明らかなように、ロシア軍が過去に介入した軍事作戦の手法、ドクトリンを忠実になぞっています。また、これらの紛争においてロシア側はほぼ当初の目標を達成しているという点で「成功体験」があることから、同じような手法でウクライナへの侵攻を行い、民間の建物を砲撃し、市街地を爆撃し、ウクライナ国民の避難生活が成り立たないよう物資を寸断して殺害するか、追い出して難民化させる、という形で実施された軍事作戦であることは言うまでもありません。

 また、国連も認めている通り、ロシア軍が制圧した地域で、数千人以上のウクライナ国民が拘束され、ロシア軍による強制拉致の対象となっています。これらはむしろ親露派住民が多く、経済的にウクライナの中では豊かなほうであるはずの東部で行われていることを考えると、降伏して武装解除を強いられても死を迎えかねない現状は「チェチェンの戦況」から見ても明らかではないかと思います。降伏してロシア軍に連行された村人は全員拷問にかけられて死に、ロシア軍に抵抗し武器を取って山に籠った村人は全員助かった、という。