「住んでる所はむつみ荘、今日の収録スベりそう、あなたの心の鬼瓦オードリー春日です」と春日の謎の自己紹介で始まった収録。春日は“新ギャグ”をぶちこんだり、唐突に「ピザでも取ろうよ」と言い出したり、突然、共演者の写真を撮ったりボケまくり。それを懸命にさばく若林。脈絡なく「カスカスダンス」を始めるとそれが若林ら共演者全員に伝染していく。そんなカオス状態に若林が「大事件だよ!」とツッコむ。その収録を終えた若林は「今日からオードリーが始まったな」と振り返った。

オードリー・若林正恭 ©文藝春秋

 実はこれは偽番組。春日はインパルス板倉らに遠隔操作されていたのだ。若林は以前、『あちこちオードリー』(テレビ東京)の「反省ノート」という企画で「今は今で幸せで、このまま『TV23時以降ラジオ男』のまま行くか、無理をして『ゴールデン覇王』を目指すか決められないまま時だけが過ぎて行く」と悩みを綴り、「自分のエンジンじゃオーバーヒート気味にやらないと『ゴールデン覇王』にはなれない」と語っていた。それでも2022年の目標として掲げたのが「ゴールデン覇王」だった。そんなオードリーが「ゴールデン覇王」を目指し「じゃないと芸人」に生まれ変わるための番組が『じゃないとオードリー』(テレビ東京)だ。番組ではオードリーの弱点を「ボケない春日」「カオスな状況に弱く社交性のない若林」だと分析。それを克服するために行われたのが偽番組だったのだ。続く第2ステージでは春日がコンビ愛を全面に出してみることに。やはり別室からの指示どおり春日は、若林の太ももを触ったり、2人で見つめ合ったりしていく。

オードリー・春日俊彰 ©文藝春秋

 だが、ここまでは壮大な前フリ。2人に即興漫才をさせる「コンビ愛即興漫才チャレンジ」へ。別室からの指示どおり「漫才をやろう」と言い出す春日に「何を言い始めてるの、春日さん?」と戸惑う若林。それでも覚悟を決め準備し始めると、春日の耳に「ここからはご自分の力でやってください。(指示を)切ります」という声。困惑する春日の表情が絶品だった。それでも漫才が始まってみると圧巻の一言。途中「生きてるねー!」と叫ぶほど「覚醒」した春日は、既存のネタではなく、この日指示を受けたボケを見事に入れ込んでいく。「オードリーハイ」になった2人は途中「お前のほうが面白い」と言い合いながらまさかのキス。オードリー“じゃないと”味わえない魅力に溢れていた。もはやオードリーが「ゴールデン覇王」になるのは時間の問題。こんな自由で楽しそうな2人が見続けられるなら「TV23時以降ラジオ男」のままでもいいと思ってしまう勝手なファン心理もあるが、きっとオードリーならゴールデンでも同じようにやり通してくれるという“希望”が確かにある。

INFORMATION

『じゃないとオードリー』
テレビ東京系 スペシャル番組
https://www.tv-tokyo.co.jp/audrey_janight/