「気圧が下がると体調が悪くなる」「雨の日の前日には頭が痛くなる」など、自分の体が天気の影響を受けていることをなんとなく実感している人は多いのではないだろうか。
“天気痛ドクター”として様々なメディアで活躍する医学博士・佐藤純さんは、天気の変化に伴う不調の中で痛みを伴う症状のことを「天気痛」と名付け「天気の変化が耳の奥の内耳や自律神経に作用して現れるもので、誰の身にも起こりうる症状」だと説明する。
ここでは、同氏の『1万人を治療した天気痛ドクターが教える「天気が悪いと調子が悪い」を自分で治す本』(アスコム)から一部を抜粋。気象病の当事者が抱える困難について紹介する。(全2回の1回目/後編に続く)
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気象病がやっかいなのは、自分では判断がつきにくいことです。たとえば、雨の日に体調を崩しやすかったり、気分が落ち込んでしまったりする傾向にある人でも、それが雨のせいであると自覚できないケースが多々あります。
体がダルくて動かない。どことなくイライラする。でも、はっきりとした病気というわけではないから頑張るしかない。そうやって無理をして、ストレスをため込んでしまう。これは本当に危険で、うつや不眠といった症状を誘発しますし、最悪の場合は自殺願望を抱いてしまうことさえもあります。
さらに問題なのは、気象病のつらさは自分以上に他人にはわかりにくいということです。ゆえに仮病と思われたり、サボっているように見られてしまうことがあり、そんな他人の“懐疑のまなざし”を気にして、なおいっそう心を病んでしまう人もいます。
過去に私が診察した患者さんのなかに、こんな人がいました。曇りや雨の日に頭痛がひどくなり、学校に行けなくなることもあるという、高校1年生の女性Aさんです。Aさんの頭痛がはじまったのは小学5年生のころで、最初はひどい痛みはなかったものの、中学に入ると症状が悪化し、授業中に保健室に行ったり、頻繁に学校を休んだりするようになりました。それが周囲に「サボり」と認識され、いじめを受けるようになってしまったのです。
Aさんは、適切な治療を受けてからは元気に学校に行けるようになりましたが、中学時代に心身両面に負ったダメージは相当大きかったはず。病気のことを他人に理解されないのは、本当につらいことだったと思います。
気象病を放っておいて、いいことは何もありません。とくに思い当たる原因がないのに、何かおかしいな?調子が悪いな?と思ったら、天気との因果関係を考えてみるようにしましょう。