当初、選手たちは数値化されることを嫌がっていた
眞鍋ジャパンが力をつけたのは、データ班の活躍も見逃せない。
10年の世界選手権で、iPadを片手に選手に指示を送る眞鍋の姿が全国に知れ渡った。
それまでコートサイドから大声を上げて檄を飛ばす歴代の監督の姿を見慣れてきた多くのファンに、この姿は新鮮な驚きだった。
試合中、アナリストによって分析されたデータはオンタイムで眞鍋のiPadに送られ、様々な観点からそれをチェックすることが出来る。たとえば、あるチームのスパイクはどこに向かって打たれることが多いのか、あるいはどこにサーブを打ったら崩れやすいか、このフォーメーションではブロックはどこにつく傾向があるかなど、試合中に瞬時に解析されるため、すぐさま軌道修正が出来るのだ。
また、日本選手では誰のレシーブが悪いとか、スパイク決定率が悪くなっているとか、以前は、「何となく」調子が悪いなと感じていたものが即座に数字として表示され、しかもあらかじめ設定した数字より悪くなると赤く染められて眞鍋の手元に届き、選手交代もやりやすい。
試合に没頭すると、選手や監督は興奮状態になり、判断が後手に回ってしまう。それまで感覚に頼っていた戦術を、数字が冷徹に示すようになったのだ。
長年全日本を背負ってきた竹下が、しみじみという。
「私が全日本のコートに立ったばかりの頃のデータって、手書きだったんです。紙にコートを書いて何番はどこで何番はどこというポジションを記し、サーブレシーブのシフトを考えることから始まって、数年前は、アナリストが試合中に取ったデータがプリントアウトされ、セットが終わるごとに渡されていたんです。それが今や、誰が何を打って、こんなミスをしたというものが、試合中にリアルに解析されるので、監督はそれに基づいた指示を出してくれるし、私もタイムアウトのときに監督のiPadを見て新たなトス回しを考えられるようになった」
当初、自分のパフォーマンスを数値化されることを嫌がっていた選手たちはデータの有効性に気がつき、自分のプレイの向上に、積極的に活用するようになった。眞鍋がにんまりする。
「世界選手権のあとぐらいから、僕より選手の方が活用するようになったんじゃないですか。世界選手権で結果が出たので、信憑性が増したのかも知れない」