青の佐々木六段、赤の藤井竜王
両陣営はそれぞれ青と赤の甲冑を纏う。佐々木六段は青の鎧が長身痩躯に見事に似合った。若き剣豪といった感じだ。藤井竜王は赤色に身を包み、19歳とは思えない落ち着いた佇まいを見せる。知将の風格が漂う。現場には50人を超える報道陣が詰めかけた。対局の様子はABEMAとニコニコ生放送で全国に中継された。
対局開始早々、二人とも「よろしくお願いします」と現代語でやってしまったが、そのあとは流暢な口上をみせる。“ござる”言葉で会場を沸かせる様子に、高橋さんは思わず拍手を送っていた。
「若い二人がここまで上手くやってくれたことが嬉しかった。前の晩に練習したんじゃないのかな」
エキシビションの枠を超えた名勝負へ
対局は序盤から藤井竜王が高度な仕掛けでポイントを奪う。木村九段の解説に、「これはガチで勝ちにきているんじゃないのか?」と観客席がざわつく。相手の佐々木六段も「藤井竜王が△9五歩~△9六歩と垂らした手と、2回目の△8六歩~△8七歩と飛車を見捨てて激しくこられた順は、人間将棋ではなかなか指せないと思った」という。
だが、さすがは若手実力者、技が決まりそうになるのを受け止めて熱戦に持ち込む。エキシビションの枠を超えた勝負に観客は酔いしれた。すべての駒も動くことができ、最後は竜王が勝ち名乗りを受けた。
村山さんは言う。
「天童での人間将棋が成功に終わった後、山形県内の市町村から夏祭りなどのイベントの開催が次々と発表されています。天童がやったなら、うちもやらなきゃダメでしょ、みたいな。コロナ禍はまだ終わったわけではないですが、少しずつ前に進んでいければと思います」
写真=野澤亘伸
◆ ◆ ◆
藤井聡太竜王と同世代の棋士たちの姿を描いた群像ルポ「藤井時代か、藤井世代か」(野澤亘伸)は、好評発売中の文春将棋ムック「読む将棋2022」に掲載されています。どうぞあわせてお読みください。
人気棋士のインタビュー、コラム、コミックなどが一冊にまとまった、観る将ファンに向けた「読む将棋」の決定版(全144ページ)。現在、好評発売中です。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。次のページでぜひご覧ください。