「さいたま市は、大宮と浦和だけではなく、与野も岩槻も合併しているんですよね。『浦和ガチャ』が発売されて話題になると、今度は与野市民だった人からこう言われるんです。『与野はないんですか?』って」(同前)
現在のさいたま市は浦和・大宮・与野の3市が2001年5月に合併、その後2005年に岩槻が編入した経緯がある。浦和と大宮の合併からは20年の歳月が流れているが、さいたま市はいまだに「浦和VS大宮」の構図で取り上げられることも多い。
中島社長によると、どうやらこの構図には歴史があるという。「商業地」としての優位性や、県庁所在地がある文教地区(編集部注:教育施設が多く集まっている地区)としての優位性などを競い合い、合併以前から何かと争いが繰り広げられてきた。
ちなみに、その構図を笑いで表現したのが2019年公開の映画『翔んで埼玉』。作中でも、大宮市民代表と浦和市民代表による言い争いのシーンが出てくる。そしてそこに割って入るのが与野市民代表なのだ。
4000個が即完売した「与野ガチャ」の全容
そんな“中立地”的な扱いを受ける「与野」に愛を捧げるべく、2022年3月に発売したのが「与野ガチャ」である。発売した8種類のラインナップには「さいたまスーパーアリーナ」や、「彩の国さいたま芸術劇場」など、「本当にこれは旧与野市エリアのご当地なの?」とツッコみたくなるものや、ご当地スーパー「与野フード・FOOD GARDEN」、「与野公園 ばらまつり」など、昔ながらの与野を感じさせるスポットも。
「今や『与野』という地名は、さいたま市にないんですよ。でもここにラインナップされているものには、『与野』という名前が付いた旧与野市エリアの施設やお店もあるんです。だからTwitter上では『待ってました』『来たよ、まさかの与野!』と旧与野市民の感極まる声が続々とあがりました。最初に用意していた4000個が即完売するほどの人気でしたね」(同前)
「与野ガチャ」のなかでも特に注目したいのは、8種類のアイテムに混じる限定ガチャ「与野はすっこんでろ!」。全カプセルの4%の確率でしかお目にかかれない超レアアイテムで、映画『翔んで埼玉』の作中で割って入った与野市民代表が、2市(大宮市と浦和市)の代表から一喝されたシーンのセリフを再現したものだ。
「合併当時、どうしても浦和と大宮に注目が行きがちだったんですけど、もちろん与野の存在もあったわけで。でもなぜか与野は話題にならなかったんです。
その構図を表している『与野はすっこんでろ!』のセリフは、ガチャを発売するにあたって外せなかったですね。今のところ旧与野市民の方からもクレームは来ていないので、きっと面白がっていただけているんだと思います(笑)」(同前)
「大宮ガチャ」第1弾の発売から1年が経過した現在は「大宮」「浦和」「与野」と合わせて9種類を販売し、先述した通り2022年3月末時点で累計7万6000個に到達している。どうしてこれほどまで飛ぶように売れているのだろうか?