潜入ルポ、ヤクザもの、自伝評伝に社会派ドキュメント……。日々、ノンフィクションを渉猟して読み続けるurbanseaさんに、「極私的2017年の5冊」を選んでいただきました!
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語り合われる、監獄を経験した者ならではの機微
堀江貴文・井川意高『東大から刑務所へ』(幻冬舎新書)
《堀江「なんだか知らないけど僕のところに花が毎日差し入れされるようになって、差出人を見たらK-1を作った石井和義館長でした」/ 井川「殺風景な部屋に花があると、どれだけありがたいかわかっている人だ」》 拘置所でのエピソードである。
監獄を経験した者ならではの機微を語りあう堀江貴文と井川意高は、ともに東大、会社経営者でもあった。また堀江はライブドア事件で、井川はバカラ賭博で作った借金を返すのに子会社から借り入れをして特別背任の罪で服役する。
本書はこのふたりの対談である。社会から隔絶され、体ひとつで生きる場所だからこその、人の習性や人間関係にまつわる気づきの数々が読みどころだ。
刑務所の運動の後に飲む「麦茶がウマすぎる」とふり返るふたりだが、そんな感覚はシャバに出た途端に忘れてしまったという。特殊な環境ゆえの錯覚だったのだろう。しかしそんな状況もあって、堀江は社員たちの寄せ書きに涙し、井川は『夜と霧』を読み、冷たい人間だと思っていたのにこうした本を読んで泣く自分に驚く。
大王製紙の創業家に生まれ、必然としてそこに入り、社長、会長となった井川。帯に載る著者近影は、そんな名門+エリートの鎧を脱いで憑き物がおちたかのような表情をしているのが印象的だ。