コロナ禍でリモートワークが増え、画面越しにお互いを見る機会も増えました。画面に映った自分の姿を見て、美容に興味を持った男性も多いはず。
形成外科医として数多くの男性の美容と向き合ってきた西嶌暁生氏によれば、男性は35歳ごろから“若々しい人”と“老け込む人”に分かれるのだと言います。
ここでは、西嶌氏の著書『だから夫は35歳で嫌われる~メンズスキンケアのススメ~』(光文社)から一部を抜粋。
多くの男性が気になる薄毛対策について、自身も薄毛男性の多い家系でありながら毛髪をキープしているという西嶌氏本人の経験も交えて解説します。(全3回の2回目/#1、#3を読む)
※抜粋に際し、一部本文を編集して掲載しています。
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絶対的な治療は確立されていない
特に男性にとって「薄毛、AGA(男性型脱毛症。Androgenetic Alopeciaの略)」は永遠のテーマではないでしょうか。
薄毛治療の歴史は古く、なんと古代エジプトの外傷手術に関する書物『エドウィン・スミス・パピルス』にも、その記録が残されています。当時はライオンやカバ、ヘビ、ワニなど動物の脂肪を混ぜた軟膏を使っていたとか。“医学の祖”と呼ばれる古代ギリシャの賢者・ヒポクラテスも、自身の薄毛に悩んでハトの糞やアヘン、セイヨウワサビやスパイスを調合したオリジナル育毛剤を発明したといわれています。が、残念ながら効果のほどまでは伝わっていません。
以降も現代に至るまで数多くの研究がされてきているものの、いまだに絶対的な対策や治療は確立されていません。
ただ、男性ホルモンが深く関係していること、特に母方の家系の遺伝を強く受けること、生活習慣がもとで薄毛になる場合もあることなどはすでに明らかになっています。
奥の深いAGAですが、その仕組みを簡単に説明してみましょう。
まず、男性ホルモンであるテストステロンが毛根にある毛母細胞に達すると、毛髪の発育を抑制する遺伝子が働き「TGF‒β」という脱毛因子がつくられます。テストステロン自体は薄毛の直接的な原因ではありませんが、ホルモン受容体や変換酵素の活性が高い人は脱毛因子がつくられやすく、薄毛になってしまうのです。これがおもな原因です。