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〈活動休止騒動〉新曲発表(カムバック)で1ヶ月働きづめに…BTSリーダーが一石を投じた、K-POPアイドルの“キツすぎる働き方”

2022/06/25
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全編英語詞でグローバルスターに

 方向性が変わるのは、ブレイクした2015年の「花様年華」シリーズ(三部作)あたりからだ。大ヒットした「I NEED U」(2015年4月)からは、いわゆる「アイドル」としての認知を強めていく。そこからは、ヒップホップグループとしてのアイデンティティを維持しながらも、マスにリーチするためのチャレンジを繰り広げてきたようにも見える。

 その後、「DNA」(2017年9月)、「FAKE LOVE」(2018年5月)、「Boy With Luv feat. Halsey」(2019年4月)、「ON」(2020年2月)と、BTSは着実に人気を拡大させていった。その次に予定していたのは、2020年4月から9月にかけて世界18都市で開催するワールドツアーだった。

 が、そこに待ち受けていたのが新型コロナウイルスのパンデミックだ。これによってツアーも中止となり、グローバルの頂点に登る寸前でその道を絶たれてしまった印象もあった。

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 その状況を打開したのが全編英語詞の「Dynamite」(2020年8月)だ。世界がウイルスの暗闇に覆われていたなか、ノリのいいこのディスコファンクは世界を明るく照らした。Billboardチャート・Hot100ではじめて全米トップに立ち、翌2021年6月に「Butter」、7月に「Permission To Dance」でもチャートの首位に躍り出た。

「アメリカン・ミュージック・アワーズ(AMA)」で最高賞を受賞したBTS ©️getty

 K-POPとしてもアジア人としても前例のない活躍だったが、RMはこの過程で悩みを深めていたと話す。

「『ON』、『Dynamite』までは、グループが自分たちの手の上にあったような感じだったけど、その後『Butter』、『Permission to Dance』を出して、どのようなグループなのか分からなくなった」(『BANGTANTV』2022年6月14日

 この発言には思い当たる点も少なくない。とくに「Permission to Dance」は、それまでのBTSとはかけ離れた楽曲だった。

 エド・シーランが手掛けたダンスについて歌ったこの曲は、リズムよりも独特のメロディを優先するポップスだ。もはやヒップホップでもファンクでもない。曲自体の良し悪しはともかく、グループとしてのBTSの文脈がこれによってかなり不明瞭になったことも納得できる。

 このようにRMはBTSのアイデンティティの揺らぎに言及し、そしてこの後に続くのが、冒頭で紹介したアイドルやK-POPシステムへの疑問だった。