役場の人は、小菅村の高齢者の拡散力はTwitterよりも速いと言っていたが、まさにその通りだった。全村民に発信するより前に、まず高齢者に説明することには大きな意味があったのだ。
生まれ育った故郷をなんとか良くして、若い世代に継いでいきたいという気持ちを、高齢者が自分の言葉で発信したことで、村全体に私たちの事業はポジティブに受けとめられていった。
おかげで、翌週に開いた全村民向けの説明会、内覧会(第四段階)も穏やかに終えることができた。若い人も多く参加してくださったが、ここでも前向きな質問や温かい励ましに溢れていた。
これで村の人たちと心をひとつにして開業を迎えることができる。
渾身のプレスリリース
開業まで1ヶ月をきると、いよいよ本格的に外部向けの情報発信に取り組むことになった。勝負はここからだった。
最初の一歩として、8月の開業にあたってオープニングレセプションとメディア向け内覧会を行うことにした。
私はこのホテルは、さとゆめの創業の思いを体現し、これから進む道を象徴するランドマークであると考えていた。それだけに、今回のプレスリリースには特に力を入れて、1ヶ月以上前から入念に準備していた。
リリース冒頭のタイトルは、
多摩川源流、700人の村がひとつのホテルに。地方創生の切り札、分散型古民家ホテル「NIPPONIA 小菅 源流の村」が山梨県小菅村に2019年8月17日(土)グランドオープン――オープニングレセプション&メディア向け内覧会も同日開催――
実は、「700人の村がひとつのホテルに」というコピーを、内部的なコンセプトに留めるのか、外に発信するのかについては、リリース直前までメンバー内で議論があった。
この段階ではまだ2棟しか開業にはならないので、「700人の村がひとつのホテルに」というコンセプトに実態が伴っていない、お客様からクレームが来るのではないか、という意見も少なくなかった。
ただ、私としては、実態をどうこう言うよりも、人口が700人にまで減ってしまったこの小さな村が、村の存続をかけてホテルを開業する、村人がみんなでお客様をお迎えするという「村の生き様」が、お客様に共感していただける価値だと思っていた。
また、これこそが、小菅村に「伴走」してきた理由なので、どうしてもこのコンセプトをメッセージとして伝えたかった。私は不安の声を押し切って、最終的にこれを対外向けコンセプトにすると決めた。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。