1970年(89分)/東宝/2750円(税込)

 いったい、映画ソフト業界に何が起きているのか――。

 本連載で何度も書いてきたが改めてそう問いたくなるほど、各メーカー・レーベルともに旧作邦画のDVD化がここに来て一気に進んでいる。待ち焦がれていたあの作品たちを、毎月のように次々と出してくれるのだから、ありがたいし嬉しいことこの上ない。

 東宝も素晴らしい。この七月は、ハードボイルドの名手・西村潔監督の作品を一斉にDVD発売している。しかも、既に出ている分も廉価版で再発売というサービスぶり。

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 中でも、今回取り上げる西村の代表作『白昼の襲撃』はVHSも含めて初のソフト化になる。これまでは浅草東宝のオールナイト上映や名画座くらいでしか観る機会がなかっただけに、今度の発売を知った時は思わず快哉を叫んだ。

 本作で描かれるのは、苛立ちと不満を抱えながら無軌道な暴力にひた走る、若者たちの姿だ。エキゾチックな横浜の港湾や路地裏を中心にした、観るからに蒸し暑い映像。日野皓正による狂騒的なトランペットの調べ。それらが合わさることで、刹那的な日々の空虚さを生々しく伝えている。

 物語は、無為な毎日を過ごす修(黒沢年雄)と少年院仲間のサチオ(出情児)がふとしたことで拳銃を手に入れたところから始まる。鼻持ちならない金持ち息子を弾みで銃撃した修は警察に追われ、ヤクザ・鳴海(岸田森)に拾われる。そこから、組長(殿山泰司)を交え、クラブの売上金を巡る裏切りと殺戮の物語が繰り広げられることに。

 西村らしいスタイリッシュな映像と切れ味鋭いアクションも魅力的だが、個々のキャラクターが、また良い。殿山、岸田に加え、鳴海の情婦を演じる緑魔子、飲み仲間で睡眠薬中毒の女を演じる石井くに子――と、ことごとく妖しくミステリアスなのである。

 そしてなんといっても、修の恋人・ユリ子(高橋紀子)とサチオとの間で繰り広げられる、修を巡る三角関係のドラマが、見事に利いていた。

 三人はいつも一緒に過ごすのだが、ユリ子はサチオが邪魔で仕方がない。そのため最後はサチオと縁を切ることを持ちかけてくる。だが、他に居場所がないことを知っている修には、その気がない。

 壊れそうなまでにナイーブで繊細な演技を見せてくる出情児が抜群で、修の傍らで生きるしかないサチオの孤独が突き刺さってくる。武骨な黒沢、太々しい高橋――という、出情児とは対極的な二人の演技がこれとぶつかり合うことで、嫉妬の渦巻く人間模様が盛り上がっていく。

 1カットたりとも隙なくカッコ良い作品なだけに、DVDで是非じっくりご堪能を。

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