居飛車と振り飛車、戦いの性質は何が違うのか
――相居飛車と対抗形(居飛車VS振り飛車)では戦いの性質が違います。指す戦法によって身につく力が異なると思いますが、トレーニングメニューを選ぶように戦法を決めることはありますか。
黒田 時期によって指してみたいというのはありますけど、強化したい力で指す戦法を選ぶと考えたことはないです。
青嶋 対抗形と相居飛車の終盤、どっちが難しいかは考えたこともなかったです。対抗形はお互いの囲いがきちんと残っている分だけ、終盤がセオリー的に進みやすい。相居飛車は中盤の時点で相手の囲いに向かってお互いに駒を進めているので、終盤の入り口でどっちも囲いが崩れていることが多いから毎回、違った展開になりやすい気はします。
石井 確かに居飛車党の人はかなり読んでいるとは思います。量もありますし、相居飛車のほうが中盤が複雑です。例えば歩を突き捨てるとき、振り飛車はだいたいパターンが決まっているから迷わなくてすみます。相居飛車だとどの筋の歩を突き捨てるか、タイミングもあわせてかなり難しいです。似ている局面でも、全然違ってきますから。でも、それが地力を高めるのにいいかはわからないです。
振り飛車党のよさは、耐え忍ぶことに慣れて忍耐力がつくことです。居飛車党が攻めたがるのは、耐えるのが嫌いだからでしょう。
青嶋 なるほど、そうか。
石井 振り飛車は基本的にカウンター狙いの戦法なので、よく攻められています。久保利明九段のようにうまく耐え忍ぶ人は違いますよ。
オールラウンダー棋士にとっての戦法選択
――3人はオールラウンダーですが、持ち時間で指せる戦法は変わってきますか。
黒田 普通は研究将棋にするんでしょうけど、私は力戦のほうがいいですね。短時間ならとがめられにくいので。
石井 横歩取りは怖いですね。ひとつのミスが勝敗に直結し、終盤のねじり合いが短い将棋ほど力が出せませんから。飯島栄治八段や横山泰明七段のようなスペシャリストを相手にすると避けられませんが……。
青嶋 対抗形よりも、相居飛車のほうが早指しだと怖いですね。
石井 それは青嶋さんが振り飛車のほうが慣れているからだよね?
青嶋 うーん、振り飛車のほうが慣れているかは疑問ですが、決まった形になりやすいというのは大きいです。
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若手3人がとことん語り明かした「オールラウンダー座談会」の本編は、文春将棋ムック「読む将棋2022」に掲載されています。あわせてお読みください。