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 何度か会ったこともある。

 AさんもBさんも、実は気がついていたのに、わからないふりをしていたのかもしれない。だがCさんが口にしたことで、さっきの女の顔がCさんの恋人であるDさんだと思えてくる。

「呼んでたの、ここに?」

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「呼ぶわけねえだろ……多分、今家で寝てるよあいつ」

「じゃあ、あれ誰だよ!」

 小声で凄むAさん。

「知るかよそんなの!」

 そもそもあり得ないのだ。

 Dさんは一同の住んでいる県を離れて別の県で就職し、Cさんとは遠距離恋愛を続けているのである。

 何かのいたずらだと思いたかったが、うつむき気味に目を見開いたまま震えているCさんを見る限り、冗談の類ではなさそうだ。

「別の女だろ……」

 とBさん。

「そうだよな、ありえねえし、Dがいるの……」

「焦ったー……!」

「じゃあ確かめてから帰る……?」

「マジで言ってんの?」

「どっちにしろ、車のほう行くならあそこの横通らないと行けねぇじゃん」

「ちょっと待った、これ何?」

 一同は互いに肩を寄せながらゆっくりと女が半身を出していた小屋に近づいた。

「誰っすかー?」

「マジもうビビったんで出て来てもらっていいっすかー!」

 返事はなかった。

 意を決し、ドアを開ける。

 ギギギィ……。

 唾を飲み込んでから3人は一斉にスマホの明かりを部屋の中に向けた。

 誰もいなかった。

 小さなロッカーが2つだけ並んでいたが、それ以外には何もない。

 言葉を交わさずとも一同はロッカーの方に明かりを向ける。もう確かめるしかない。そう思って、プレハブ小屋の敷居を跨ごうとした瞬間、Bさんが2人を止めた。

「ちょっと待った、これ何?」

 照らした足元には1枚の紙が落ちていた。

 電柱などに貼りつけてあるチラシのような、安っぽい紙が裏返しで置いてあり、そこに異様にきれいな筆跡のボールペン字でこう書いてあった。

〈靴で上がったらその靴は捨てなさい 靴下で上がったらその靴下は捨てなさい はだしで上がったら残念ながらもう助からない〉

 その下に数行開けて、もう一文付け足されていた。

〈しんせつ〉

 3人ともバッとドアから身を引き、プレハブ小屋から10メートルほど離れた場所へ走り出した。

「はぁ、はぁ、はぁ……もう、帰ろう」

「あのさ、ちょっと俺Dに電話かけていい? 急に胸騒ぎがしたっていうか……ちょっとみんな、電話する間、いてくれない? 一瞬だから、スピーカーホンにするから」

「いいって!」

 CさんはDさんに電話をかけ、震える手でスピーカーホンのボタンをタップした。