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2018/05/10

 ところで、肝がんには原発性の肝細胞がんのほかに、大腸がんなどから飛び火した「転移性肝がん」もある。すべてが切除できるわけではないが、抗がん剤で腫瘍が小さくなり、手術できる患者が増えた。また、最近では、転移性肝がんにもラジオ波を実施する病院が出てきた。しかし、國土医師は「転移性肝がんには、ラジオ波をすべきでない」と警鐘を鳴らす。

「肝細胞がんと違って形が歪(いびつ)なので、焼き残すことが多いのです。ですから、転移性肝がんには好ましくありません。可能な場合は手術で取るのが原則です。肝臓にがんが転移しても、私は絶対にラジオ波は受けません」(國土医師)

 ただ、ラジオ波を実施しているNTT東日本関東病院消化器内科主任医長の寺谷卓馬医師は、こう反論する。

「転移性肝がんのほうが、完全に治療することが難しいのは事実です。でも当院には、外科医から『切れない』と言われた患者さんが来るのです。逆にラジオ波で治療しきれない部分を、外科医に切除してもらうこともあります。患者さんのことを考えたら、どちらがいいか争うよりも、総力戦で挑むべきだと思います」

 実は、寺谷医師は肝細胞がん、転移性肝がんに限らず、「3センチ、3個以内」というガイドラインの枠を超えた患者にも、ラジオ波を実施している。その中には、40個以上、腫瘍のある患者もいた。

「06年に、転移性肝がんが13個ある患者さん(70歳代男性)を紹介されました。ラジオ波でがんを制御できるのか悩んだのですが、患者さんが『それでもやってほしい』と言うので治療したのです。これまでに24回治療したのですが、そのたびに再発する個数が減り、9年以上経った今もご存命です。そのような経験を一度すると、多発しているからといって、放置できなくなりました」

 すべてがうまくいくわけではないが、ガイドラインを超えたラジオ波治療に手応えを感じている医師は少なくない。3センチ3個を超えて、肝機能が悪いと通常は緩和ケアとなり、医師のほうがあきらめてしまう。だが、寺谷医師は言う。

「ガイドラインに縛られず、新しい治療にチャレンジしないと可能性は開けません。私も肝がんになったら、積極的に新しい治療を受けたいと思っています」

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 チャレンジしないと道が開けないのは、胆道がんや膵がんも同じだ。腹痛や黄疸などの症状が出て発見されたときには、すでにがんは進行して、厳しい状態のことが多いからだ。

「どちらも、切除できなければ、残念ながら『治る』ことはありません。ですから、仮に私がこれらのがんになったら、治りたいので手術を受けます」

 そう話すのは、胆道がんの中でも特に難度の高い「肝門部胆管がん」の執刀経験が豊富な、県立静岡がんセンター肝胆膵外科部長の上坂克彦医師だ。

 胆管、門脈(腸で吸収した栄養を肝臓に送る血管)、肝動脈が集まる、肝臓の「扇の要」にあたる肝門部のがんは、肝臓を大きく切る必要があるうえに、胆管や血管をつなぎ直すため、ミリ単位の細かい作業が必要だ。これを年間10例以上実施している施設は限られ、世界を見ても20施設ほどしかないという。

「当院を受診した肝門部胆管がんの患者さんで、手術できる人は半分くらいです。その中には、他院で『手術できない』と言われた方もたくさんおられます。当院で手術できた方の5年生存率は43%で、90年代の2倍になりました。胆道がんや膵がんと言われたら、一度は手術数の多い専門施設を受診してみるべきだと思います」(上坂医師)